骨の構成成分であるカルシウムは、食事によって摂取され、腸で吸収されて血液中に入り、骨に運ばれ骨が作られます(骨形成)。その一方で、骨はしなやかさを保つために、古くなった骨の成分を壊し(骨吸収、骨破壊)、新陳代謝を行っています。
また、身体の中のカルシウムの約1%は骨や歯以外の細胞や血液中に存在して、神経や筋肉の興奮、あるいは血液凝固(血を固める働き)などで非常に重要な役割を果しています。そのため、血液中のカルシウムが足らなくなると、不足分を骨のカルシウムで補うことになります(骨吸収、骨破壊)。
このように、骨は身体を支える他に、カルシウムの貯蔵庫としての役割を担い、骨は作られる一方で絶えず破壊を繰り返しています。骨量の減少は、このような骨形成、骨吸収のバランスが崩れた結果なのです。
骨量の減少には以下にあげるようなさまざまな因子が関係してきます。
- 加齢:歳をとるとともに、身体の中のホルモンが変化するために、骨量が減少します。その他、胃酸分泌の低下や腸の吸収能の低下、腎臓での尿へのカルシウム排泄の増加なども原因となります。
骨粗鬆症に関係するホルモンとその作用
ホルモン |
作 用 |
女性ホルモン |
エストロゲン |
エストロゲンは骨形成を進め、また骨吸収を抑えます。しかし、閉経前後からエストロゲン分泌が激減するため骨量が減少します。 |
カルシウム
調節ホルモン |
副甲状腺ホルモン |
通常は、副甲状腺ホルモンは血液中のカルシウムが不足すると分泌され、骨吸収を促進します。しかし、高齢者ではカルシウムの摂取不足により血液中のカルシウム濃度が低下するため、副甲状腺ホルモンが分泌されて骨吸収が進みます。 |
カルシトニン |
カルシトニンは骨吸収を抑えます。しかし、高齢者ではカルシトニンの分泌が低下するため骨吸収が進みます。 |
- 女性、閉経:女性の最大骨量は男性より低く、また閉経後の数年間は急激に骨量が減少します。そのため、女性は男性より骨粗鬆症になる危険性が高く、より若い年齢から骨粗鬆症が見られます(男性では、女性ホルモンと同様、男性ホルモンが骨形成を進めています。しかし、男性ホルモンは女性ホルモンほど加齢によって減少しません)。
- 遺伝:家族に骨粗鬆症にかかった人がいる場合、骨粗鬆症になる可能性が高くなります。
- カルシウム不足:カルシウム不足:カルシウムは少なくとも1日600mg、成長期の若い人、閉経を迎えた人などは1,000〜1,500mgが必要です。高齢者では淡泊なものを好み、食事量も減ってくることから、カルシウムの摂取量が減りがちです。
- ビタミンD不足:腸におけるカルシウムの吸収にはビタミンDの作用が必要なため、ビタミンDが不足するとカルシウムを吸収することができません。
- 日光浴不足:ビタミンDは、腸でのカルシウムの吸収に不可欠なビタミンです。そして、皮膚の中で日光の紫外線にあたって、はじめて、その役を果すことができるようになります(活性ビタミンD)。そのため、日光に当たらないとうまくカルシウムを吸収することができません。
- 運動不足:筋肉だけでなく、骨の強さを保つためにも運動は非常に大切です。運動といっても、スポーツとは限らず、日常生活の自然な動作や生活様式も、骨や筋肉の維持に影響します。
- 喫煙、飲酒、カフェイン:喫煙は胃腸の働きを悪くしてカルシウムの吸収を悪くし、過量のカフェインは尿へのカルシウムの排泄を増やします。また、過量のアルコールはカルシウムの吸収を減らして、排泄を増やします。
- 食塩、糖分:食塩や糖分を摂りすぎると、カルシウムの尿への排泄が増加し、身体の中のカルシウムが不足することになります。
- ストレス:過度のストレスは、腸におけるカルシウムの吸収を妨げます。
- 薬剤:特にステロイドを長期で内服している方に、骨吸収の亢進と骨形成の低下を生じ、著明な骨量減少を来たすことが知られています。
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