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かぜのような症状があるとき >> かぜ

かぜのような症状が見られる時は 

かぜとは?

 かぜは「かぜ症候群」「普通感冒」「急性上気道炎」「急性気道感染症」など、さまざまな表現で呼ばれています。またわかりやすく「鼻かぜ」「のどかぜ」などと言うこともあります。一般的に気道に炎症が起こり、症状が慢性にならないものを「かぜ」と言います。そのようなことから、医師によっては肺炎をもかぜとしてしまうことがあります。一方、耳鼻科の先生は、「かぜ」という病名をあまり使いません。「鼻炎」「咽頭炎」「喉頭炎」など、部位名が入った病名を使う傾向にあるようです。
 「かぜ」は軽い病気という意味合いがあるようで、軽い下痢のときでも「おなかのかぜです」という医師もいます。それを聞いた親は「かぜ」という言葉で安心できるようです。しかし、「かぜ」は治ったからこそはじめて言える病名で、最初は「かぜでしょう」「たぶんかぜだろう」と言うのが正しいのです。でも、あいまいな言い方をすると頼りにならない医師と思われることもあるので、「かぜです」と断定することもあります。しかし「かぜは万病の元」と言われるように、侮っていると肺炎を起こしたり、髄膜炎になったりすることもあるので、安易に考えないようにという戒めの意味で使われているのです。

かぜの原因は?

 かぜは気道の急性感染症です。病原体を介して感染するもので、その90%以上はウイルスです。かぜには200種類以上の原因ウイルスがあります。お母さんからの免疫(母子免疫)をもらっているため、生まれてから半年まではこれらのかぜにあまりかかりません。しかし免疫は一度かかったことで初めてできるものなので、免疫が切れてしまうと自分自身で守らなければならないのです。
 子どもたちの生活範囲が広がると、かぜウイルスと出会う機会が増え、よくかぜにかかります。多いときには、月に3度もかぜにかかることもあります。何度もかぜにかかることで免疫ができ、小学校に入学するまでにはかぜにかかることも少なくなっていきます。小児科の一般外来を受ける病気はかぜがほとんどですが、そのほとんどは乳幼児なのです。

かぜの症状は?

 原因ウイルスによって症状に特徴があることが、だんだんわかってきています。アデノウイルスはなかなか下がらない熱、ライノウイルスはひどく出る鼻水、RSウイルスは痰が絡んだゼコゼコとしたせきといった特徴があります。
 一般的にはまず水っぽい鼻水が出て、その後、熱が出ることが多いようです。せきが徐々に出始めて2、3日すると熱が下がり、鼻水が少しどろっとして黄色くなります。その鼻水もまた2、3日で水っぽくなり、徐々に少なくなってかぜは治ってしまいます。合併症のないかぜであれば熱は2、3日、全体の症状としても1週間ほどでよくなりますが、熱が下がらない、せきがひどくなる、粘り気のある黄色い鼻水が続くなどの症状が続くようであれば合併症を併発している可能性もあります。
 かぜはいろいろな病気に発展したり、合併症を起こしたりします。熱を伴うときには熱性けいれんを起こすことがあり、せきがひどく、熱がなかなか下がらないときには気管支炎や肺炎に発展している可能性もあります。黄色い鼻水が続くときには副鼻腔炎や中耳炎を合併していることが多いようです。

かぜの治療は?

 かぜの原因はウイルスによるものがほとんどなので、抗生物質では効果がありません。治療は症状を抑える薬で行います。鼻水が出るときには鼻水を抑える薬、せきがあるときにはせき止め薬を使います。熱のあるときは熱冷ましを使いますが、熱はかぜウイルスと戦っている体の反応なので、使い過ぎは禁物です。いわゆる「かぜぐすり」と呼ばれるものがありますが、実際かぜに効く薬などないのです。かぜのときは安静と十分な睡眠、栄養と水分補給などで体の免疫力を高めることがいちばんなのです。
 合併症が起こると速やかにその治療へと移行しなければならないため、きめの細かい観察が必要です。中耳炎、副鼻腔炎、気管支炎、肺炎など、細菌による感染症が疑われるときに、初めて抗生物質を使います。

おなかのかぜ

 嘔吐して下痢をする状態を胃腸炎と言います。その原因が細菌やウイルスのときは感染性胃腸炎と言います。子どもたちが日常的にかかる胃腸炎はウイルス性のものがほとんどです。ウイルス性胃腸炎の代表がロタウイルス、ノロウイルス、アデノウイルスです。
 ウイルス性胃腸炎は吐き気や嘔吐から始まる場合がほとんどで、少し経ってから下痢が始まります。嘔吐は半日~1日で治まりますが、下痢は2、3日~1週間ほど続きます。熱がないこともありますが、あっても高熱になることはなく、長くは続きません。また、せきや鼻水といったかぜの症状を伴うこともあります。
 おなかのかぜにかかったときに注意したいのは脱水です。体内の水分量が多い、低年齢の子どもほど脱水になりやすいので要注意です。元気がなくなり、泣いていても涙が出ません。また、おしっこの回数が減り、舌が苔のようにパサパサになるうえ、皮膚の弾力もなくなります。この場合、軽い脱水であればイオン飲料水をのませ、これ以上悪化するのを防ぎます。これを経口補液と言います。嘔吐が続き、脱水が重くなったときは点滴で水分補給をします。この場合、外来での受診ですむケースもありますが、入院を要することもあります。
 アデノウイルスによる胃腸炎は一年中見られますが、あまりひどくなることはありません。ロタウイルスやノロウイルスは秋から冬にかけて流行することがあります。ノロウイルスと比べてロタウイルスのほうがひどい下痢が長く続くため、脱水になる傾向が高まります。ロタウイルスは乳幼児の下痢症として昔から知られていますが、年齢が上がるにつれて症状も軽くなり、かぜの症状だけで下痢・嘔吐を伴うことがなくなります。一方ノロウイルスはおとなも感染するもので、同じような症状を示します。
 ロタウイルス、ノロウイルスともに予防対策がとても大切です。集団生活をしている場所で一人患者が出ると、次から次へと同じ症状の子どもが増えていきます。下痢便と吐物が感染源で、これらを触った保育者や子どもは、流水で必ず手を洗うようにしましょう。塩素系の消毒薬があればベターです。

夏かぜ

 冬はかぜの多い季節として昔から言われていました。以前は冬かぜの代表としてインフルエンザが言われていましたがインフルエンザには脳症や肺炎など重症になることから国は「インフルエンザはかぜでなない」と言うキャンペーンをはりかぜと区別するようになりました。「冬かぜ」という言葉は残っていますがインフルエンザのない冬かぜはインパクトがありません。一方夏かぜはプール熱、手足口病、ヘルパンギーナが揺るぎない地位を保っています。夏かぜは気温と湿度が高い夏に元気になるウイルスが原因です。かぜと言われるので一般的には軽い病気ですが時に髄膜炎、脳炎を合併することもあり注意が必要です。またプール熱の原因ウイルスはアデノウイルスです。このウイルスはプール熱だけではなく色んな臨床像を示します。手足口病、ヘルパンギーナの原因ウイルスはエンテロウイルスです。このウイルスもアデノウイルス同様色んな臨床像を示します。その結果これらのウイルス感染症を総称してアデノウイルス感染症、エンテロウイルス感染症と呼ぶ傾向になっています。原因ウイルスがわかれば対策もより理論的になります。又ある程度経過も予測しながら観察ができるようになります。その結果無駄な薬を使う頻度が少なくなっています。
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RSウイルス感染症について
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