東日本大震災の際のJMATの活動報告
地域医療の再生を支援
日本医師会災害医療チーム(JMAT)は、2010年3月に提言された新しい取り組みです。阪神・淡路大震災の教訓をもとに創設されたDMATと呼ばれる災害派遣医療チームが災害時の超急性期医療を担うのに対し、JMATはその後を引き継ぎ、急性期以降~地域医療の再生までを長いスパンで支援することを目指したものとして提案されました。
東日本大震災が発生し、日本医師会はJMATの派遣を決定しました。日本医師会は各都道府県医師会との繋がりを活かして、被災県で必要な医療支援をコーディネートしたのです。避難生活が長引いた今回の震災では、避難所・救護所等での医療・健康管理、公衆衛生対策が支援の主な目的で、医師や看護職員などの医療従事者からなる1395チーム・延べ6378名が被災地に派遣されました。もちろん多くの医療従事者が参加したことにも価値はありますが、医療従事者が一定の人数、絶えることなく継続的に派遣されたことに大きな意義がありました。一つひとつのチームの滞在期間はおおむね3日~1週間でしたが、栄養状態や飲み水の管理・感染症の問題など多様なニーズがある被災地へ様々な分野の専門医を継続的に派遣することで、JMATは被災地の多様なニーズに応えていくことができたのです。
復興のためには、地域医療の再生が欠かせません。被災地の今後の医療を支えていくのは、地元の医療機関であり医師たちであるからです。そこでJMATは被災県医師会の要請によって出動するという形をとりました。全国横断的なコーディネートを担うのは日本医師会、被災県の医療を統括するのは県医師会、医療ニーズを見極めて現場の指揮をとるのは郡市区医師会と、それぞれの機能を明確に分けたことが、災害医療からのスムーズな移行に大いに有用だったと考えています。
被災地の都道府県医師会・郡市区医師会が徐々に地元での医療を担えるようになった2011年7月15日、JMAT派遣は終了しました。地域医療へのスムーズな引き継ぎのため、そして被災者の不安をできるだけ軽減するため、段階的な撤退を行ったことも特筆すべき点に挙げられます。撤退後は中長期医療支援として、今後の被災地での災害関連死を未然に防ぐことを目的としたJMATⅡの派遣が始まり、2012年3月現在も活動を続けています。
JMAT派遣が終了した後も、東日本大震災での実践を検証し、各都道府県医師会で改善のための研修プログラムがスタートするなど、それぞれの地域医療を守りながら災害時にも対応できるようにするための取り組みが、引き続き日本医師会によって行われています。
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