医学教育の展望
人生経験を医療・医学に活かせる仕組みを作る
(後編)

多様な人材を混ぜて、学び合いの環境を作る

東海大学医学部では、2年次からは一般入試・付属高校からの進学・地域枠・学士編入という、異なる背景を持つ学生たちが共に学ぶことになる。実習などのグループ分けの際には、あえて彼らを混ぜたグループを形成することにしているという。

今井先生「ねらいは、学び合いの効果です。20歳前後の若い学生たちは、社会人経験者の物事の捉え方や勉強の方法など、様々な面から刺激を受けて成長していきます。化学や薬理学の専門知識を持った編入学生が講義をしてくれることもあります。教えるというのは非常に高度な学習ですから、教える側にとっても教わる側にとっても良いことですね。また、他の医療職出身の学生から『医師に聞きたかったこと』を聞く機会もあり、多職種連携という観点からも、得難い体験だと思います。

医学部に限らず、今の学生は同世代以外の人とコミュニケーションをとる機会が少ないですよね。でも、社会に出たら様々な世代の人と仕事をすることになりますし、医師は特に幅広い世代とのコミュニケーションが必要な職業です。様々な経歴の同級生たちと一緒に学ぶ中で、異なる背景や価値観を持った他者を理解するという、医師にとって必要な能力も身につけていってほしい。それは、編入学生にとっても同じだと思います。お互いから学び合って、自分を高めていってほしいですね。」

変化する時代の中でも、変わらない思いを持って

学士編入学制度は、実際には生徒たちにはどのように受け止められているのだろうか。また、東海大学における医学教育の今後の展望を最後に伺った。

「学生から、学士編入に対する不満などは聞いたことがありません。例えば試験勉強でも、年長の編入生がリーダーシップを発揮して『みんなで頑張ろう』という雰囲気を作っていて、一般入試で入ってきた学生たちも編入生を頼りにしています。そのことが、学士編入が上手くいっている何よりの証拠だと思いますし、実際これは『学力向上』、『医師国家試験合格率の向上』などの実績として現れています。だからこそ、25年以上学士編入を続けているんです。

医学教育をめぐる状況によって、今後も募集人数が増減する可能性はあります。しかし、私たちが『良医』の資質のひとつと考えている『広い視野と、様々な経験を生かす事のできる成熟した精神』を養う場をこれからも提供することで、日本の医療・医学がより良くなってほしいという思いは変わりません。」

 

今井 裕先生
(東海大学医学部長/専門診療学系 画像診断学 教授)
2001年東海大学医学部入職。2010年東海大学医学部長に就任。