FACE to FACE
interviewee 山田 舞耶 × interviewer 金 美希

金:私たちは国際医学生連盟日本(IFMSA-Japan)の性と生殖・AIDSに関する委員会(SCORA)に所属しています。SCORAはセクシャルマイノリティへの理解促進や若者への性教育を行っています。私は在日韓国人で、自身もマイノリティの一人として、他のマイノリティについて知りたいと思ってSCORAの活動に興味を持ったのですが、山田さんがSCORAに入るきっかけは何でしたか?
山田(以下、山):大学の先輩にIFMSA-Japanの新歓へ誘われたのがきっかけです。性についての正しい知識や考えるきっかけを提供し、無理解や偏見による生きづらさを感じないようにすることで、「あなたらしさ」を大切にすることを願うSCORAの活動は、自分の関心にマッチするように思いました。当時の私は、自分の周囲の人に寄り添うことに強い関心を持っていました。なぜなら高校1年の時に母ががんを患い、大切な人を身近で支えらえない無力さを経験したからです。それ以来、心に悩みを抱える人に、どうすれば寄り添えるのかと考えるようになったんです。
金:性についての問題には、元々関心があったのですか?
山:これも高校時代の体験が大きいです。女性の友人に「私は、女の子が好きだ。」とカムアウトされたことがあり、私はびっくりしてきちんと言葉を返せず、悔いが残っていました。SCORAで活動を始めた頃、「男性に彼女がいるか尋ねることがあるけれど、その男性には彼氏がいるかもしれない。」と言われて、はっとしました。セクシャルマイノリティは自分にも身近な存在であり、私は無意識にその人を傷付けているかもしれないと考えるようになりました。
金:セクシャルマイノリティへの理解促進活動をするなかで、価値観の違いからマイノリティのことを受け容れない人もいます。けれどその存在を知ってもらうことに価値がありますよね。
山:今は受け容れてもらえなくても、将来その人が、自分とは異なる性のあり方に向き合うことになったその時に、考えるきっかけになってくれればと考えています。自分と異なる部分をもった他者の魅力を尊重し、押し付けるのではなく委ね合うことを大切にしていきたいですね。
金:中高大学生への性教育の出張授業では、若い人が自分やパートナーを傷付けないために必要な知識を伝えていますよね。私は2度しか参加していませんが、600人の高校生を前にして話をするのは緊張しました。
山:私も最初は緊張しましたが、先生ではない同世代の立場で、避妊や中絶、性感染症やデートDV(若いカップルの間で起こる暴力)について話すと、身近なこととして聞いてもらえると思います。デートDVや中絶を経験した子がいるかもしれないので、そこに配慮しながら、知識を軸に私たちスタッフの経験や想いをお話ししています。
金:団体の責任者として活動に悩んだことはありますか?
山:リーダーとしての振る舞い方に悩んだこともありました。人を引っ張っていくカリスマにも憧れましたが、私はそういうタイプではない。けれど活動をするなかで、リーダーシップには様々な形があると思うようになりました。自分は先導役でなく最後尾で見守る役。個々の想いを重ね、組織の方向性を分かち合う場を作ることに専念するようになりました。私は引退しましたが、これからは後輩がさらに素敵なSCORAを築いていってくれると思います。
interviewee 山田 舞耶(東京女子医科大学5年)
IFMSA-Japanの構成組織「SCORA」の元責任者。性に関する意識の向上やセクシャルマイノリティへの社会的理解の向上を目指して活動してきた。「IFMSAには様々な考え方をもった人がいます。今まで気付かなかったものを発見できる場となるはず。私たちと一緒に活動してみませんか?」
interviewer 金 美希(東京女子医科大学3年)
今回、私の最も尊敬している先輩と対談させていただく機会をいただき、心から感謝しております。先輩の想いを受け継いで、今後のIFMSAを引っ張っていけるような存在になりたいと思っています。
※医学生の学年は取材時(2015年2月)のものです。



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