FACE to FACE
interviewee 岡田 直己 × interviewer 大沢 樹輝

大沢(以下、大):岡田さんは、今年4月に日本内科学会で「医師流出入動態推計」を発表し、都道府県ごとの医師の流出入数の推計値を明らかにしました。研究を始めようと思ったきっかけは何だったんですか?
岡田(以下、岡):僕は医学部は再入学で入ったんです。元々数字を使ったモデリングや統計が好きでよく勉強していて、その知識を公衆衛生の分野で活用したいと考えていました。
医師不足、医師の偏在についてはたくさん議論がなされていますが、そのことを客観的に示したデータはありませんでした。なんでみんな根拠をもとに、数字を使って議論しないんだろうという気持ちがあって、誰もやらないのなら自分がやろうと思って研究を始めました。
大:実際の研究は、東大の医科学研究所にある上昌広先生の研究室に所属して行ったんですよね。学外の研究室に所属するのは、医学生の中では珍しいように思うのですが。
岡:僕自身は「学外の医学研究室」という意識を持ったことはなく、自分にとって本当の意味での勉強ができる場だと思っています。僕は医学部に入る前は東大の理Ⅰにいたんですが、同級生は3000人余りいて、サークル活動などで他学部の学生と交流する機会もたくさんあった。いろんな能力がある人と接することができて、刺激的でした。でも医学部に入ってみたら、1学年たった100人の世界で、同じような人たちがそろって同じ勉強をしている。そんなのは全然成長してると言えないんじゃないかって感じていました。そんなとき、知人の紹介をきっかけに、上研究室に通うようになったんです。研究室には看護学・薬学・法学など様々なバックグラウンドの人がいて、医学部にはない多様な環境の中で揉まれている感覚があります。
大:僕もやっぱり医学部は社会から隔離されているという感覚があって、山本雄士ゼミというゼミで医療政策について学んでいます。ゼミでは製薬会社やコンサル、政治家などの社会人を交えてセミナーを開くので、安定路線の医学生では想像もつかないような幅広い意見を聞けたり、世の中のシビアな感覚を教えてもらえて、とても勉強になります。でも、岡田さんはゼミなどの団体ではなく、一人で外の世界に出て行ったんですよね。
岡:そうですね。あまり医師同士で固まりたくなくて、とにかく外に出たかったんです。自分と全然違う世界に飛び込もうかとも思いましたが、上研究室という、医師とそれ以外の人が半分ずつという環境があったので、まずここから一歩を踏み出してみようと考えました。
学生のうちから研究している人が研究室にいたことも励みになりました。やりたいことがあっても、1年生だからどうしようと思っていたときに、3年生でやってる人がいたら、そっか普通にやるもんなんだ、俺もやろうって思えますよね。
大:岡田さんは、これからはどんな分野で活動していこうと考えていますか?
岡:医師の偏在の問題には引き続き興味があります。医師の充足数についての議論の妥当性を検討しつつ、医師の移動のフローをどうすれば医療を過不足なく提供できるのか研究したいです。ただ、研究するにしても、臨床の勉強はしっかりとしておきたいと思っています。普通の医師がやらないような変わったことをするからこそ、普通以上にちゃんとした医師になって、説得力を持っておきたいですから。
大沢 樹輝(東京大学3年)
公衆衛生の分野の研究をしている医学生にお会いしたことがなかったこともあり、岡田さんのお話をとても興味深く聞かせていただきました。自らの軸を持ちつつ、キャリアについても深く考えられているその姿にも感銘を受けました。今回は貴重なインタビューの機会をいただきありがとうございました!
岡田 直己(慶應義塾大学医学部5年)
東京大学中退。固定観念にとらわれることなく、よりよい医療を目指し、新しいことに挑戦したいと考え、活動してきました。



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