誰もが自分の健康を主体的に獲得できる
世の中へ(2)

「不健康であること」は個人だけの責任ではない

――長谷田先生はどのような研究をされているのですか?

:私の所属する研究室では、社会の構造や人間関係が、人の健康にどのように影響を及ぼすのか、また社会階層が健康に与える影響が、地域の特性によってどのように異なるのか、といったことをテーマにしています。

このような問題に関心を持ったのは、佐久での後期研修で、家族背景や経済状況、地域との関わり方が、患者さんの健康状態に大きく影響していると痛感したからです。在宅医療を例にすると、同じ病名で、同じように「家で死にたい」と言っている人でも、家族のサポートを受け、様々なサービスを利用して希望通り家で亡くなっていく人もいれば、家族もおらずお金もなくて、十分なサービスを受けられないまま、病院で亡くなっていく人もいる。同じ病気でも、社会的背景によって経過が全く異なるんですよね。では、経済的、社会的に恵まれない人は、どういうシステムがあればより健康で幸せになれるのか。そんな疑問を持ったのがきっかけでした。

:ヨーロッパでは、個人の健康の原因について考えるときに、その人を取り巻く環境にまで視野を広げ、時にはそれを健康政策に反映させることもありますが、日本ではまだまだそういう考え方が足りないように思います。どうしても、「病気になったのはその人の責任だろう」という考えがある。でも本当は、「いきいきと生活しよう」と思える環境にいるのといないのとだけでも、健康状態は大きく変わってくると思います。

:健康を個人の責任に帰結させてはいけないですよね。ある人がなぜ太っているのか、なぜ運動できないのか、なぜ煙草を吸っているのか、ということには、必ず社会的背景が関わっている。どんな環境が原因でその人がそういう行動をとっているのかという点に、目を向けるべきだと思います。

座光寺 正裕医師(写真左)
南牧村・野辺山へき地診療所 所長(佐久総合病院から出向)
阪本 直人医師(写真中)
筑波大学 総合診療グループ/地域医療教育学(大学院)講師
長谷田 真帆医師(写真右)
東京大学大学院 医学系研究科 社会医学専攻 博士課程