FACE to FACE
田中 ジョン 寛顕 × 永井 久子

永井(以下、永):先輩は、2年前に大学で落語研究会を立ち上げ、学内外で公演を行うなど、積極的に活動していらっしゃいます。その前にはIFMSA-Japanの秋田支部を立ち上げ、理事も務めていらっしゃいましたよね。
田中(以下、田):うん、今は落研に専念しているけどね。
永:私が初めて先輩にお会いしたのはIFMSA-Japanの新歓で、第一印象は「ファンキーなお兄さん」でした。既存の枠組みにとらわれず、次々に新たな活動を始める姿を見ていると、その印象は間違っていなかったと感じます。先輩にとって、新しいことを始めるのは大変ではないんですか?
田:そうだね。落研の立ち上げも実はそんなに苦労しなかったんだ。SNSや口コミで呼びかけたら、興味のある人が自然と集まってくれた。今の時代、人とのつながりができたら、何でもわりと簡単に始められるよ。
永:病院実習中も、月に2回以上公演をしているそうですね。忙しくありませんか?
田:実習は、思っていたほど忙しくはないかな。寝る時間も落語の練習をする時間もあるし。それに実習自体も結構楽しいよ。だって、患者さんと会話が弾まなかったことが一度もないもん。
永:どんな話をするんですか?
田:最初はもちろん患者さんの健康や症状についてだけど、患者さんの持ち物を褒めたりとか、気付いたことを話題にするようにしてる。そうすると打ち解けやすい気がするね。
永:先輩は昔から物怖じしない性格だったんですか?
田:小さい頃は目立つのが恥ずかしいと思うこともあったけど、生徒自治の気風が強い高校で過ごすうち、積極的に行動することに抵抗がなくなったかな。高校時代には、英語のスピーチコンテストに出場して、アメリカでスピーチしたこともあるよ。ホスピタル・クラウン*の始祖であるパッチ・アダムスのエピソードと、入院中の祖母を毎日お見舞いしたらどんどん元気になったっていう自分の経験談を話して、「笑いの力で患者を心から健康にする医師になりたい」って。あの頃は我ながら頑張ってたなぁ(笑)。今は好きなことをやっているだけだけどね。
永:でも、好きなことを実現していく先輩の行動力と発信力に、自然と人が惹かれて集まってくるのはすごいことだと思います。秋田は立地的にも、外に出たり外から来るのが大変な場所なので、先輩のように働きかけてくれる人はとても貴重ですよ。外に出てみたいけど一歩を踏み出せない学生や、外に出るという意識もなかった学生にとって、先輩は世界を広げてくれる「入口」のような存在だと思います。私が色々な活動に参加できたのも、先輩のおかげですしね。
田:興味本位で動くことも大切なのかもしれないね。本を読んで他人の意見を知るのもいいけど、僕は自分で経験したことを自分の言葉で語って、考えを深めていけるような人間でありたいと思ってるんだ。そのためにも、未知のものや、自分の想像の及ばないようなことをもっと経験していきたいな。
永:将来はどんな医師を目指しているんですか?
田:これはパッチ・アダムスが目指していたことでもあるんだけど、病院という形にはこだわらず、例えば児童養護施設や子ども食堂のような、みんなが集まれる居心地の良い場所を作ってみたいなと考えてるよ。これからも、自分が面白いと思えることを突き詰めていきたい。もちろん落語も続けていくつもりだよ。
田中 ジョン 寛顕(秋田大学5年)
カナダ生まれ福岡県育ち。大学1年の時にIFMSA-Japan秋田支部を作る。3年時にIFMSA-Japan理事に就任し、メキシコでの世界総会に参加。その後、大学に落語研究会を立ち上げる。春風亭昇太師匠と林家木久扇師匠の前座を務めた。今後は医師国家試験を目指しながら、秋田ケーブルテレビの番組にレギュラーで出演予定。
永井 久子(秋田大学3年)
ジョンさんは「やりたいことはやっちゃえ!(笑)」という持ち前のノリと勢いで周りを巻き込んで、全力で真面目にワクワクすることをやってのける方という印象でした。今回はそんな面だけでなく、先輩のコアになっている考え方や思いを聞けて大変良い刺激になりました。今回はインタビュアーという大変貴重な経験をありがとうございました。
*ホスピタル・クラウン…病院などで、患者や家族、医療スタッフの笑いを引き出す道化師。
※医学生の学年は取材当時のものです。



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