【小児科】出口 拓磨先生
(筑波大学附属病院 小児科)-(前編)
――出口先生はどうして小児科を選ばれたのですか?
出口(以下、出):幼少期、軽い小児喘息のため病院通いをしていました。辛い症状を癒やしてくれる医師への信頼と憧れから、「将来なりたい職業はお医者さん」と言うようになり、そのまま今に至ったという感じです。その頃は小児科医に限らず、漠然と「町のお医者さんになりたい」と思っていましたね。
小児科を選んだのは、臨床実習がきっかけです。担当患者さんたちと仲良くなり、先生方も非常に良くしてくださいました。この時に抱いた「子どもたちの未来のために働きたい」という思いが今につながっています。ただ、当時は循環器内科や消化器内科、救急にも興味がありました。そこで臨床研修の1年目はまず救急と内科を回り、そのうえでやはり小児科に進もうと決意したんです。
――成人を診る科と比べ、どのような点が魅力でしたか?
出:小児科では、患者さんの保護者とのコミュニケーションが非常に重要になります。コミュニケーションがうまくいかず壁ができてしまうこともありますが、保護者の方とうまく通じ合えたら、味方が2倍になったようなもので、治療もとてもスムーズに進めていくことができます。そこが成人の科との違いであり、やりがいのあるところだと感じました。また小児科では、急性期から慢性期まで、さらには成長した後も、患者さんと長く関わることができます。成長した姿を見ることができるところも非常に魅力的でした。
――臨床研修2年目は、どのような経験を積まれましたか?
出:4月から3か月間は、コモンディジーズから急性期疾患まで一通りの疾患を診ておこうと考え、大学病院ではなく地域の子ども病院で研修しました。また、2年目の終わりには心臓血管外科を回りました。小児科医になると手術を依頼する立場になることも多いので、手術する側の気持ちや術前管理の様子を知っておきたいと考えたからです。
――臨床研修後は、そのまま筑波大学に入局されたんですね。
出:はい。筑波大学附属病院は茨城県唯一の大学病院で、全ての疾患を幅広く診ています。例えば都内の大学病院だと、病院数が多い分、専門分野に特化しているところが多いのですが、私は小児のことなら全て診られる小児科医になりたかったので、筑波大学を選びました。
筑波大学の小児科は、「新生児」、「血液腫瘍」、「循環器」、その他神経や消化器や内分泌など諸々の疾患を診る「総合」の4チームに分かれています。私は最初の半年間は新生児、その後、総合と血液腫瘍を3か月ずつ回りました。4年目の今は循環器チームに所属し、10月からは市中病院に出る予定です。それらと並行して、3年目から市中病院での一般外来もしています。
【小児科】出口 拓磨先生
(筑波大学附属病院 小児科)-(後編)
――今後の展望や目標をお聞かせください。
出:小児科のジェネラリストになることが一番の目標です。そのうえで、集中治療や小児循環器などの分野にも関わっていけたら、と漠然と考えています。小児ICUに入る子には、心疾患のある子が多いです。先日も、僧帽弁腱索断裂を起こし、それが原因で肺うっ血を来して呼吸不全になり、挿管されて搬送されてきた子がいました。直前に発症していた川崎病の影響からか、全身の炎症が強く、できるだけ炎症を抑えてから心臓手術を行う必要がありました。呼吸状態を管理して炎症を治す時間を稼ぐという、集中治療的な面が強かったですね。こうした例を見ると、やはり循環器をサブスペシャルティとしながら、術前術後を含めた全身管理ができる医師が必要だと感じます。
――最後に、医学生へのメッセージをお願いします。
出:保護者の方との信頼関係を築くことは、小児科医にとって重要なスキルです。専門的な説明をしっかりできることももちろん重要ですが、ちょっとした世間話が、保護者の方と打ち解けるきっかけになったりもします。学生時代に部活やアルバイトなどで多様な経験を積んで、話の引き出しを増やしておくと、その後にも活きてきますよ。
小児科に対し、なんとなくハードルが高いと感じる人もいるかもしれません。私自身、学生時代は「小児科志望の人は真面目で意識が高い」というイメージを持っていました。確かに難しい症例の多い科ではありますが、スタートラインは皆一緒です。あまり壁を感じず、門戸を叩いてほしいなと思います。
医学部卒業 | 2016年 筑波大学医学群医学類 卒業 | 学生時代は6年間ヨット部に所属していました。咄嗟の判断が命に関わることもある競技なので、緊迫した場面で責任を持って判断する力が身についた気がします。 |
卒後1年目 | 筑波大学附属病院 臨床研修 | |
卒後3年目 | 筑波大学附属病院 小児科 | |
卒後4年目 | 筑波大学附属病院 小児科 | 小児科専門医を取得するためには論文を1本以上執筆することが必要です。病棟業務の合間を縫って、ご指導いただきながら執筆を進めています。 |
2016年 筑波大学医学群医学類 卒業
2019年7月現在
筑波大学附属病院
小児科
- No.44 2023.01
- No.43 2022.10
- No.42 2022.07
- No.41 2022.04
- No.40 2022.01
- No.39 2021.10
- No.38 2021.07
- No.37 2021.04
- No.36 2021.01
- No.35 2020.10
- No.34 2020.07
- No.33 2020.04
- No.32 2020.01
- No.31 2019.10
- No.30 2019.07
- No.29 2019.04
- No.28 2019.01
- No.27 2018.10
- No.26 2018.07
- No.25 2018.04
- No.24 2018.01
- No.23 2017.10
- No.22 2017.07
- No.21 2017.04
- No.20 2017.01
- No.19 2016.10
- No.18 2016.07
- No.17 2016.04
- No.16 2016.01
- No.15 2015.10
- No.14 2015.07
- No.13 2015.04
- No.12 2015.01
- No.11 2014.10
- No.10 2014.07
- No.9 2014.04
- No.8 2014.01
- No.7 2013.10
- No.6 2013.07
- No.5 2013.04
- No.4 2013.01
- No.3 2012.10
- No.2 2012.07
- No.1 2012.04
- 医師への軌跡:藤谷 幹浩先生・尾川 直樹先生
- Information:Summer, 2019
- 特集:急性期医療の「ソノサキ」
- 特集:急性期病院を退院後に受け皿となる医療機関・介護施設
- 特集:適切な療養の場を見つける
- 特集:急性期と在宅を多職種でつなぐ
- 特集:ケーススタディ 倉敷スイートタウン 回復期・慢性期の現場に行ってみました!
- 特集:ケーススタディ 倉敷スイートタウン 一つの「まち」として機能する
- 同世代のリアリティー:地理学を学ぶ 編
- 地域医療ルポ:熊本県球磨郡相良村|緒方医院 緒方 俊一郎先生
- レジデントロード:呼吸器内科 虎澤 匡洋先生
- レジデントロード:小児科 出口 拓磨先生
- レジデントロード:病理 勝矢 脩嵩先生
- 医師の働き方を考える:若手医師も、マネジメントの視点を持って医療の本質を見てほしい
- 日本医師会の取り組み:勤務医と医師会
- グローバルに活躍する若手医師たち:日本医師会の若手医師支援
- 日本医科学生総合体育大会:東医体
- 日本医科学生総合体育大会:西医体
- 授業探訪 医学部の授業を見てみよう!:島根大学「生化学」
- 医学生の交流ひろば:1
- 医学生の交流ひろば:2
- FACE to FACE:松本 千慶 × 児玉 ありす