FACE to FACE

松本 千慶 × 児玉 ありす

各方面で活躍する医学生の素顔を、同じ医学生のインタビュアーが描き出します。

 

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児玉(以下、児):松本先輩には、所属しているアカペラサークルや、先輩が運営に携わる医学生向けの留学支援プラットフォーム「イノシル」でお世話になっています。

先輩は東京大学の農学部を卒業後、東京医科歯科大学に2年次から学士編入されていますが、編入はかなり大きな決断だったのではないでしょうか。

松本(以下、松):そうですね。卒業後の就職先は決まっていましたが、2~3年働いて辞めるくらいならと思い、内定を辞退しました。さらに、学生時代に組んでいたバンドのメジャーデビューもそれとなく決まっていたのですが、それも脱退しています。学士編入学の倍率は高いので、不安もありましたが、駄目だったときにどうするかも具体的に想定し、思い切って挑戦してみました。

:医療に興味を持たれたきっかけは何だったのでしょうか。

:卒業する頃に、脳腫瘍と告げられた身内が手術によって元気を取り戻す姿を見て、医療が人を支えているという実感が湧いたのがきっかけです。その時、予防できるがんとそうでないがんの違いが気になり、予防医療に関心を持ちました。また、農学部では国際開発農学を学んでいたのですが、卒業論文で南アフリカをテーマにした際、経済が発展しているにも関わらずHIV感染者の割合が今でも高いと知ったことも、予防医療に興味を持った理由の一つです。

:去年からは一般社団法人予防医療普及協会の活動にも参加されているそうですね。

:はい。予防医療普及協会は、糖尿病や子宮頸がんなどといった病気の予防について、啓発活動を行っている団体です。医療に関する情報にアクセスする手段を持たない人がまだ多いなか、学生の私でも何か働きかけることができないかと思っていた時、この団体に出会いました。5年生になって病院実習が始まってから、思いのほか時間に融通が利くことに気付き、思い切って門を叩いてみました。

:予防医療の啓発活動も、イノシルにおける留学情報の提供も、根底には情報格差に対する問題意識があるように感じました。そこに着目されるようになったのはなぜですか。

:小学生の頃、難民支援活動をなさっていた緒方貞子さんに感銘を受けて以来、格差問題に関心があったんです。国際開発農学を学んだのも、それがきっかけでした。これからは、医療に関する情報格差を縮める仕事ができたらと思っています。

:目標をはっきり持っているからこそ、いつも積極的に行動することができるのですね。

:はい。ちょっと冒険してでも、苦労してでも、自分の決めた目標のために頑張るということはいつも心に決めています。

:そのような活動的な生き方をするうえで、何か心がけていることはありますか。

:簡単なことでも面倒くさがらずに、ちゃんとやることが大切だと思います。疲れていても出かけてみる、ちょっとしたメールを送ってみる、SNSでフォローしてみるなどといった小さなアクションが、思ってもみないチャンスにつながることもあるからです。実は、かつて組んでいたバンドがメジャーデビューのきっかけを掴んだのも、SNSのフォローからでした。

一歩を踏み出すだけで、出会う人が変わり、見える世界も変わってくる。そうやって経験してきたことは、必ずこれからの糧になると思います。だからこれからも、私は自分らしい道を歩んでいくつもりです。

main松本 千慶(東京医科歯科大学6年)
広島県出身。東京大学在学中にバンド活動・テレビ出演・ライターを経験し、大学卒業後に東京医科歯科大学に2年次編入学。在学中に8か月間留学。「イノシル」(P40参照)や予防医療普及協会の活動に携わる。趣味は料理・アカペラ。予防医療・グローバルヘルス・ジェネラリストに興味があり、将来は国内外問わず活躍し、格差をなくす仕事がしたい。

児玉 ありす(東京医科歯科大学4年)
松本先輩はとても行動力のある素敵な先輩で、今まで私にはとても追いつけない存在のように感じていた部分もありました。今回お話を聞いて、先輩のバイタリティの源は、ちょっとした努力の積み重ねやしっかりとした目標設定にあると知ることができ、自分もできることから行動してみようという気持ちになりました。とても有意義な時間をありがとうございました。

※医学生の学年は取材当時のものです。