下の額に入った絵は、上にあるミケランジェロの天井画「アダムの創造」を、人工知能(AI)が真似して描いたものです。この絵を見て、皆さんはどう感じるでしょうか。

2000年代の世界を変えたイノベーションが携帯電話やインターネットの普及だったとすれば、2010年代に最もインパクトを与えたのは人工知能だったと言えるでしょう。しばらくはコンピューターが人間に勝てないだろうといわれていた囲碁の世界で、2016年には「アルファ碁」という人工知能が世界的なトップ棋士を破りました。最近では2018年に人工知能が描いた絵画がオークションで落札され、数千万円の値がつきました。目覚ましい進歩を続ける人工知能は、これまで得意だった計算やボードゲームの枠を超え、アナログで難しいとされてきた芸術の分野でさえも、人間に迫ってきています。

こうした人工知能の進化を受け、これまで人間によって担われてきた仕事の多くが「人工知能によって代替可能なのではないか」と考えられるようになりました。一部の業種・職種については、遠くない将来には人間が担う必要がなくなるという予測もされています。いずれ到来する、人工知能が多くの役割を果たす世界において、人間は、そして医師はどのような在り方を求められるのでしょうか。

今回は「医師とAI」をテーマに、歴史的経緯や今日的トピックを紹介していきます。

 

 

アダムの創造
人工知能


人工知能が、ルネサンス期の絵画・様々な肖像画や肖像写真など数十枚を学習し、ミケランジェロの天井画「アダムの創造」をモチーフにして自ら描いたものです。この画を描くだけでも相当な学習と演算を要していますが、この程度の学習では「絵画」と言えるものはできないようです。