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【形成外科】中山 大輔先生
(杏林大学医学部 形成外科学教室)-(前編)

勝矢先生

――中山先生はどうして形成外科を選ばれたのですか?

中山(以下、中):高3の夏に形成外科に関する新聞記事を読んだことが、最初のきっかけです。四肢の軟部悪性腫瘍の人が、形成外科の再建により、切断を免れただけでなく機能を回復することができたという内容にとても感動し、医学部に行くことを決意しました。しかし、実際に入学して、5年生からの臨床実習で一通り各科を回った時、最も面白いと思ったのは消化器外科の分野でした。病院見学に行き始めたのも、この頃からでした。部活の1学年上の先輩が研修していたこともあり、日本赤十字社医療センターへ見学に行き、そこで肝臓外科の権威の先生に憧れ、肝臓外科医を志すようになりました。でも、臨床研修2年目になり、入局に向けて進路をじっくり考え直すなか、また形成外科のことが気になりだしたのです。臨床研修先には形成外科がなかったので、千葉大学、東京大学、東大と関連のある杏林大学の3病院を見学させていただき、「やはり形成外科に進もう」と決めました。杏林大学を選んだのは、医局の雰囲気と、症例数の多さからです。形成外科は病院によって症例の偏りが大きいのですが、杏林大はバランスが良く、手術件数が一番多いところも魅力でした。

――専門研修ではどのように経験を積んでいくのですか?

:最初は手術室に入室して、手術のセッティングを覚えることから始めます。また、すぐに執刀も始めます。まずは様々な手術の閉創や、鼻骨骨折の治療。慣れてくると腫瘍切除や頬骨骨折の治療、顕微鏡手術も行います。1年目の派遣先の施設ではリンパ浮腫に対するリンパ管静脈吻合術という手術を多く行っていました。顕微鏡下にリンパ管と静脈をつないで浮腫を治すものです。助手から始め、次第にリンパ管と静脈をつなぐ数箇所のうちの最後の一つを執刀させてもらうようになります。また、外傷で切れた指などの神経を顕微鏡下でつなぐ手術も経験しました。

――入局して、難しさを感じた点はありますか?

:それまでやってきたことが通用しなかったことです。私は臨床研修で外科コースでしたので、手術に入った回数は200例以上あり、執刀も30例近くありました。しかし、形成外科の手術は経験したことのない新しいものばかりでした。外傷の縫合一つとっても、それまで見たこともないような大きく深い傷ばかりで最初は大変でした。

――6年目の現在の医局での様子をお聞かせください。

:再建については、皮弁の採取や血管吻合を行っています。顔面骨では、標準的な頬骨骨折などの手術は1~2年目の先生がすることが多く、その分もう少し複雑なものを扱わせてもらえるようになりました。また多少ですが、新入局者の指導も行っています。

 

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【形成外科】中山 大輔先生
(杏林大学医学部 形成外科学教室)-(後編)

――今後、大学院には進まれる予定などはありますか?

:形成外科は、「まずは技術を修得しよう」という気風があることもあり、当医局では臨床を離れて大学院に進む人は多くありません。臨床と、基礎を含めた研究を両方するというスタイルが普通ですし、私も今はそうしています。

――今後、どのような分野の専門性を高めていきたいですか?

:現在、勉強に力を入れているのは、難治性潰瘍です。動脈硬化による虚血や糖尿病が原因の難治性潰瘍の患者さんは増えています。お世話になっている臨床教授の専門分野でもあるので、しっかり診られるようになりたいです。また、形成外科を目指すきっかけとなった機能再建についても、もっと深く勉強していきたいです。例えば、陳旧性顔面神経麻痺*でうまく笑えなくなってしまった方の顔に広背筋を移植して「笑いの再建」をする手術は、当医局が力を入れている分野でもあり、特に興味があります。

――最後に、形成外科の魅力をお聞かせください。

:形成外科は術後の美しさが問われる世界です。「どうやってより良い結果を得るか」と考えながら、上手な先生の手技を目で盗んで、職人芸のように技術を磨き上げていくところはとても刺激的です。また、難治性潰瘍など、今まで治せなかった疾患に対し、新しい治療法をどんどん取り入れて治していくことにもやりがいを感じています。高3の時の自分の直感は正しかった、形成外科の仕事は天職だと今しみじみ感じています。

 

医学部卒業2014年
千葉大学医学部 卒業
卒後1年目 日本赤十字社医療センター
臨床研修
日本赤十字社医療センターの肝臓外科の先生は、他で受けていないような難しい手術をたくさん行っていました。その姿に憧れて、この頃は肝臓外科医を目指していました。
卒後3年目杏林大学医学部
形成外科学教室 入局
埼玉医科大学総合医療センター
形成外科
卒後4年目杏林大学医学部
形成外科学教室
卒後6年目 杏林大学医学部
形成外科学教室
来年は専門医資格を取得する予定です。専門医になると、治療方針などを一人で決定できるようになります。

 

1day

*陳旧性顔面神経麻痺…顔面神経麻痺を発症後、完全に回復しないまま長時間が経過し、麻痺が残存した状態のこと。

中山 大輔先生
2014年 千葉大学医学部 卒業
2019年10月現在 
杏林大学医学部 形成外科学教室