第6回 医学生・日本医師会役員交流会 開催報告(前編)

2019年8月22日(木)、東京都文京区の日本医師会館に全国の医学生が集まり、日本医師会役員と活発な議論を行いました。

第6回医学生・日本医師会役員交流会が、「医師の働き方改革」をテーマに開催され、全国から多様なバックグラウンドを持つ医学生が参加しました。第1部では、今村聡日本医師会副会長が、応招義務等に代表される医師の仕事の特殊性や、医師の労働者性に関する議論について整理しました。また、城守国斗日本医師会常任理事が、厚生労働省の「医師の働き方改革に関する検討会」で行われた議論と、2019年3月に出された報告書の内容等について解説を行いました。第2部では参加者が、働き方改革や、それに関連する医師の偏在問題や地域医療構想といった話題について、活発な議論を交わしました。

 

123

 

タイムスケジュール

14:00~開会総合司会 日本医師会常任理事 小玉 弘之
14:02~会長挨拶日本医師会会長 横倉 義武
14:05~第1部
イントロダクション
・「働き方改革」における医師の働き方
 日本医師会副会長 今村 聡
・「医師の働き方改革に関する検討会」の議論
 及び報告についての説明
 日本医師会常任理事 城守 国斗
・参加者の自己紹介  
15:15~休憩
(コメントシートの記入・提出)

15:30~第2部
ディスカッション
参加者によるディスカッション
16:20~総括日本医師会 副会長 今村 聡
16:30~閉会
16:45~懇親会

 

1

 

第6回 医学生・日本医師会役員交流会 開催報告(後編)

当日の議論内容

医師の偏在対策と地域枠

小玉常任理事(司会):働き方改革を実現するためには、地域医療体制の維持と医師の偏在対策も合わせて取り組むことが重要でしょう。

今村副会長:医師の偏在対策の柱の一つが地域枠制度です。地域枠について、皆さんは同級生あるいは当事者として、どのような意見を持っていますか?

医学生:私の大学のある地域では、地域枠で入ってくる学生の割合がとても多いです。地域枠で入学したのに、「奨学金と違約金を払いさえすれば、地域で働かなくていい」というように、地域枠の仕組みや理念への理解に乏しい学生もいるようで、かなり問題だと感じています。地域枠の希望者に対して、きちんと地域枠のことを説明し、そのうえで選んでもらうことが重要だと思います。

医学生:入学時のスクリーニングに加え、卒後の働き方に対する拘束を強化した方が良いと思います。あまり強くしすぎると、居住権の自由など人権問題が発生してしまいますが、そのあたりも含めて慎重に検討を進めていくべきでしょう。

医学生:私自身、地域枠で入学し、地域枠制度の事情についてはよく調べています。皆さんがおっしゃったように、地域枠の学生の卒後の進路の縛りを強くするという傾向は今強まっています。しかしそのことで、学生に対し、地域で働くことへの負の印象を与えているのではないかと危惧しています。「地域枠出身者が嫌々働いている」というイメージが定着すると、地域で誇りをもって働いていらっしゃる先生方にも失礼だと思います。

地域枠以外の医師の偏在対策

小玉常任理事:医師の偏在について、何か地域枠以外の対策は思いつきますか?

医学生:私は医学部入学前に介護の仕事をしており、そのことで地域医療に興味を持ちました。今の医学部教育では、各分野・診療科ごとの授業の合間に、おまけのように地域医療の講義がなされている面があります。学生に地域医療に興味を持ってもらえるよう、主体的に学ぶ時間があるといいと思います。

医学生:医局制度をうまく活用することで、地域にローテーションで人を派遣する、産後にパートタイムなら働けるという人をうまく配置するなど、地域医療体制を維持しつつ各人の働き方を尊重しやすくなるのではないかと思います。

医学生:医局を強化すると、強制力を持って人を異動させることになってしまいます。私は、その地域特有の充実した余暇の過ごし方をアピールするなどして、若い医師が積極的に地方に行きたくなるような仕組みを作れればと考えています。

医学生:私も、地域で働く医師に対して給与や福利厚生面を充実させるなど、多様な選択肢を用意することで、医師が地域に行くインセンティブを創出していく方が良いと思います。

医学生:医局の人事に反発すると働けなくなったり、留学が難しくなったりという時代もあったと思いますが、今は留学先を自力で探せて、医師の転職サービスも発達しているような時代です。医局はこうした時代の流れで必然的に弱体化した面もあり、再び医局の力を強めるのは難しいのではないかと思っています。医師の少ない地域は、裏を返せば学生や研修医にとって良い修練の場であるとも言えます。インターネットを活用するなどして、指導医の先生もうまく地方にマッチングできれば、教育資源の豊富さをアピールできるようになるのではないかと思います。

 

総括

今村 聡 日本医師会 副会長

本日は、夏休みという、医学生の皆さんにとって大変重要で忙しい時期にもかかわらず、たくさんの医学生にお集まりいただいて意見交換をさせていただき、本当にありがとうございました。

日本医師会として今日最後にお伝えしたいことは、我々は医師の、そして人の多様性を認めることを非常に重視しているということです。働き方改革を進めるにしても、働き方に関する価値観は一人ひとり違います。ですから国の検討会等の場でも、勤務時間を制限するばかりで終わるのではなく、一人ひとりの価値観や多様性が確保されるような働き方改革をしてほしいということを繰り返し訴えているのです。

もう一つ、医学生の皆さんに伝えたいことがあります。皆さんは、これから医師になっていくなかで、様々な問題意識を持って日々の仕事に取り組んでいかれると思います。そこで生じた意見を、ぜひ、医師会に伝えてほしいのです。意見を伝えるためには、医師会員になっていただくのが一番良いと思うのですが、もし会員でなかったとしても、日本医師会は今日のように、現場の医師と意見交換をする機会を設けていますので、そうした場で直接申し出ていただけると非常に嬉しく思います。