授業探訪 医学部の授業を見てみよう!【後編】

INTERVIEW 授業について先生にインタビュー

アートを通じて、複雑なことに向き合える人間を育てたい

「生命・医療とアート」は4年次の公衆衛生実習(必修)の一部として2012年に開講されました。開講当初は本課題を選択した学生は4人でしたが、現在では希望者も増え、10~12人が受講しています。

生命科学や医療技術の発展により、医師に求められる人間性や倫理は複雑性を増しています。しかしそれは医学教育では充分に学ぶことができていません。医学部では学ぶべき知識が多い一方、創造力や表現力を訓練する場が少ないからです。そこでこの実習は、生命科学や医療の問題について新たな角度で捉え直し、創造力と表現力を磨くことを目的としています。

実習では、まず導入として既存の生命・医療に関するアートを鑑賞し、それについて対話を行います。学生の中には普段アートに触れる機会を持たない人もいるので、ここは丁寧に行っています。続いて、作品のアイデアを出し、東京藝術大学の院生やプロの芸術家の創作指導を受けながら、実際に作品を創作します。最後に、他の公衆衛生実習との合同発表会で作品をプレゼンテーションします。

この実習では、アートという明確な答えのないものを通じて、曖昧なことに向き合い、言葉で表現できないものを表現する訓練ができます。「生命について」といった複雑かつ漠然としたテーマについて、作品創作を通じて自分の内面と向き合い、他人の作品を見て対話し、考えを深めていく。こうした機会は、他の授業ではなかなか得られません。

医師になれば、正解のない複雑な選択をしなければならない場面が必ず出てきます。この授業を通じて、単純化できない状況や複雑な問題ともしっかり向き合える人間になってほしいです。

原田 成先生
慶應義塾大学医学部 衛生学公衆衛生学 専任講師

 

 

 

学生からの声

正解のないことを考える機会になりました

6年 遠藤 夏実
私はiPS細胞の未来をテーマに、医療の最先端技術に対する希望と不安を表現することに取り組みました。一般的な医学部の授業では、知識や診断など「正しさ」を求められる場面が多いですが、まだ正解のないことを深く考える時間も大切だと感じました。

医師として命に向き合う準備ができました

6年 大塚 啓介
私は「生と死」をテーマに映像作品を創作しました。これは、医師にとって避けては通れない課題です。臨床実習が始まりつつあるタイミングで、アートの創作を通じて命と向き合う経験をしたことで、これから現場に立つための覚悟ができたと感じます。

アートの力を感じることができました

6年 加藤 亜美
普段なかなか関わる機会のない藝大生から直接アートについて教えていただけたのは貴重な体験でした。プレゼンテーションでは自分の意図を伝えることの難しさを体感するとともに、サイエンスを学んでいるだけではわからないアートの力を感じることができました。