第3話 医療崩壊させてたまるか!

 

 

前のページでは子どもに変えられてしまった安田くんですが、今度は現在の姿に戻り、ドンネルさんと一緒に、ある地域の中核病院の様子を眺めています。二人の姿は他の人には見えていないようですね。

安田くんとドンネルさんが見ているのは、ある新興感染症が流行したときの様子です。この中核病院のベッドは、感染症の患者であっという間にいっぱいになってしまいました。人員数も、マスクや消毒液、防護服などの物資も不足しており、医療スタッフの疲弊もピークに達しています。このまま中核病院の診療体制が崩壊してしまうと、この地域では、治療を必要とする患者に適切な医療を提供することができなくなってしまうでしょう。

しかしそのとき、地域の他施設の医療職が動きました。地域医師会が専用のテントを設置し、開業医の会員が多く駆けつけ検査を集中的に引き受けました。ある中小病院は、症状の落ち着いた患者の転院先として入院患者の受け入れを始めました。さらに医師会は地域の医療者の声を汲み取りながら、記者会見を行って市民や国に医療機関の危機的状況を訴え、協力・助力を求めました。

まんがの内容はもちろんフィクションですが、今年はまんがで描かれていることと同じような状況が、日本の各地で実際に生じていました。2020年の3月以降、新型コロナウイルス感染症の流行によって日本各地の医療体制がひっ迫したことは、この特集を読んでいる皆さんの記憶に新しいところでしょう。現在も流行は収束したとは言えず、予断を許さない状況が続いています。しかし、緊急事態宣言が出されていた頃から比べると、「入院医療提供体制のひっ迫」「医療崩壊の危機」といった言葉を耳にする機会は少なくなってきていると感じませんか? その裏側には、それぞれの地域における医師や医療者たちの多大な尽力があります。そして医師会は、医療者たちのそうした動きを支援したりリードしたりする役割を担った(担っている)のですが、そのことについては次のページで詳しくお伝えしていきます。