FACE to FACE

大見謝 望 × 大庭 千穂

各方面で活躍する医学生の素顔を、同じ医学生が描き出すこの企画。今回は対談形式でお送りします。

 

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大庭(以下、庭):望さんとは琉球大学地域医療研究会で出会いました。特に離島医療に関心が深い方という印象です。

大見謝(以下、見):那覇市の出身なので、大学入学まではあまり離島に馴染みがなかったのですが、沖縄で医師として働くとなると離島には必ず関わることになるため、関心を抱くようになり、地域医療研究会に入りました。

昨年7月からは、Gloca Landという団体で、医療系進学を志望する離島地域の中高生をオンライン上で応援するシマナビnet+という活動もしています。自分が浪人生だった時、現役大学生の方に話を聴いて助けてもらったことが、この活動を始めたきっかけです。沖縄における医学部進学はハードルが高く、那覇で受験勉強をしていた自分も大変だったので、離島の受験生はさらに苦労があるのではないかと思ったのです。

千穂さんはなぜ地域医療研究会に入ったのですか?

:小学生の時に隣の市で起きた虐待死が、私が医学部を志すきっかけでした。大学では子どもと関わろうと思っていたところ、地域医療研究会で離島の子どもとの交流会を開いていると耳にし、入会しました。

現在は学童保育のアルバイトもしており、子どもの貧困など、沖縄の子どもをめぐる現状を肌で感じ、学んでいます。この学童保育では「夜の子どもの居場所」と「若年妊婦の居場所」に関する事業も行っているため、性教育にも関心を持つようになりました。

:僕も子ども食堂で子どもの居場所作りに携わりましたが、沖縄においては離婚率の高さや未成年の出産の多さ、基地問題、労働賃金など、子どもの貧困には様々な社会的要因が複雑に絡んでいると知りました。家族や近所のつながりに助けられている部分もありますが、一筋縄ではいかない問題ですね。

:そのようななかで、学生という立場だからこそできることもありますよね。私は難病を抱えた子どもたちが沖縄で行う宿泊キャンプに何度か参加したのですが、まだ医療者ではない立場で子どもやご家族と話すことで、患者さんの立場から医療を考える機会を得られました。

:卒業後も、学生時代に学んだことを活かしていきたいですね。僕は、まず離島に行きたいと考えています。離島の病院で実習を経験したのですが、コロナ対応を含む医療基盤の脆弱さを体感することになりました。いつかは小さな島で、隣に植物や小動物を育てる場所がある、みんなの憩いの場になるような診療所で医師をしたいです。

:私は地域医療や性教育など、今は様々なことに関心があるのですが、卒業後は地元の大阪に帰り、災害医療や国際医療に携わりたいと思っています。地域医療研究会では離島の医療者不足を知りましたが、災害医療や国際医療も同様の問題を抱えていると思うので。ただ、離島の魅力に惹かれ、いずれは沖縄に戻るかもしれませんね。

:改めて振り返ると、勉強もしつつ自分が楽しいと思うことをたくさん見つけられた大学時代だったと思います。医療に関する多くの問題にも直面しましたが、様々な世界に触れて視野が広がったように感じます。

:私も、学生の立場を活かして様々な活動をした結果、医学部の外にも広い世界があると気付き、医師以外にも数多くの尊敬できる人たちと出会うことができました。だからこそ私は、自分が医師になった後で何をしたいかという目標を見据えて、これからも頑張りたいです。

大見謝 望(琉球大学6年)
1996年沖縄県生まれ。私立興南高校卒。大学1年から琉球大学地域医療研究会で活動。同研究会の活動を2019年に日本プライマリ・ケア学会の学生セッションにて発表し、優秀発表賞を受賞。2020年に離島医療の課題に取り組む任意団体NPO GlocaLandの設立に携わり、現代表を務める。様々なアプローチで将来の地域医療に貢献していきたい。

大庭 千穂(琉球大学5年)
大阪府出身。修学旅行で訪れた離島に魅了され、琉球大学に進学。琉球大学地域医療研究会に所属。かねてより医療現場での子どもの療養環境に関心があり、病院ボランティアとして夏祭りなど小児科病棟でのイベントの発案・実施に携わってきた。現在はNPO GlocaLandのシマナビnet+部門の代表を務める。

※取材対象者の所属は取材時のものです。
※取材:2021年8月

No.39