
糖尿病専門のセンターで
あらゆる合併症を総合的に診ていく
【糖尿病・代謝内科】石澤 香野医師
(東京女子医科大学糖尿病センター)-(前編)
患者さんとの対話を重視

――糖尿病センターの糖尿病・代謝内科を目指した経緯を教えて下さい。
石澤(以下、石):人と話をするのが好きだったので、生活習慣病を専門としている糖尿病・代謝内科か、精神科で迷いましたが、内科的なことを勉強したほうがいいかなと思って糖尿病・代謝内科を選びました。
――糖尿病・代謝内科は患者さんとのコミュニケーションが多いのでしょうか?
石:そうですね。薬やインスリンの量をこちらで調節するだけでなく、その人の生活や人生を理解しないと、生活習慣の改善やセルフケアへの適切な介入ができないので、心配事などもしっかり聞き、相談しながら目標を決めています。
1~2年目の頃は、「じゃあ食事療法で1600キロカロリーにしましょう」というようなことをポンポン言っていたのですが、生活習慣の改善って患者さんにとってそんなに単純なことではないんですよね。「それってお茶碗何個分ですか」とか「どういう食事をすればいいんですか」とか「飲み会の時はインスリンはどうしたらいいですか」とか、一人ひとりの生活スタイルの中で具体的にどうすればいいのかを提示できないと、患者さんの信頼を得られません。だから、逆に患者さんから「こうしたらうまくいったよ」という経験談を聞いたりすることは非常に勉強になりました。そういった意味でも、患者さんとの対話がとても大事だと思います。
――心療内科に国内留学されていますが、糖尿病・代謝内科との接点はどの辺でしょうか?
石:例えば患者さんの中には、しぶしぶ通院しているけれども実際には生活スタイルを変えたくないという方も多くいらっしゃいます。仕事の方が優先順位が高かったり、決まった生活様式を崩したくなかったり…。そこで、認知行動療法的なアプローチが必要になることも多いんです。行動変容ができているかどうかを確認するプロセスが治療の上で非常に重要になってくるので、行動科学や心理学の知識が役立つんですね。国内外の臨床でもそういったアプローチがたくさんされています。


糖尿病専門のセンターで
あらゆる合併症を総合的に診ていく
【糖尿病・代謝内科】石澤 香野医師
(東京女子医科大学糖尿病センター)-(後編)
糖尿病センターの集約医療
―― 糖尿病センターの特徴を教えて下さい。
石:当センターは、あらゆる糖尿病患者さんのトータルケアを目指して設立されました。糖尿病は一生付き合っていかなければならない病気ですから、罹病期間が20~30年という患者さんも珍しくありません。血糖コントロールと合併症の予防を継続的に行っていく必要があり、かつ合併症の種類も腎症・網膜症・神経障害・感染症など多岐にわたるので、これらの治療を集約的に行うには、センターは優れたシステムだと感じます。
――合併症の治療にはどのように関わっているのでしょうか?
石:ほとんどの合併症を、糖尿病・代謝内科、糖尿病眼科、コメディカルスタッフと共同でチーム医療として診ています。腎症に関しては、透析室が一つ上のフロアにあり、透析導入にも関わります。網膜症や白内障の手術は糖尿病センターの糖尿病眼科医が行いますが、手術の際には糖尿病センターの糖尿病・代謝内科の主治医が必ずついて、血糖値や血圧などの内科的な管理を行います。合併症が出ても主治医が継続して関われることが、患者さんの安心にもつながっていると思います。
子育てとの両立
―― 子育てと仕事の両立は、どのようにされていますか?
石:東京女子医科大学は、院内保育・病児保育・ファミリーサポートシステムといった子育て支援策が充実しているので、第一線で働きながらでも子育てがしやすい環境だと感じます。とはいえ、もちろん家族のサポートは重要です。主人も医師なのですが、主人の仕事が早く終わったときは、子どものお迎え・ごはん・お風呂をお願いしています。実家の母の助けも大きいですね。家族それぞれが関わることができる日をカレンダーに書き込んで調整していますが、どうしても誰も手が空いていないという日もあります。そういう時は、ベビーシッターさんやファミリーサポートさんといったサービスをお願いしたりもしています。
―― 必要なときには外部の力を借りるのも大事ですよね。育休を6か月しかとらずに復帰したときは、不安はありませんでしたか?
石:同じように出産し、仕事に復帰した先輩たちに相談にのってもらったので、大丈夫だと思えました。医師としては後輩、母親としては先輩という同僚も多く、復帰の時期や保育園の入れ方など、具体的なこともたくさん教えてもらいました。「きっと大丈夫、みんなやってきたんだから」という安心感があったから、早く復帰できたんだと思います。
―― 子どもができてから、変わったことはありますか?
石:仕事の時間配分をものすごく考えるようになりました。子どもって片手間に相手をすることができないので、自分の時間をまとめてとることができなくなるんです。その分、細切れの時間をうまくやりくりして仕事を進めていくやり方に切り替えないとだめだなと。30分の間にちょっとだけ文献を読んだり、当直中にまとめてデータを整理したりして、効率よく時間を使えるように気をつけています。
2002年 東京女子医科大学医学部卒業
2013年1月現在 東京女子医科大学糖尿病センター 助教



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