
患者さんと一生懸命向き合い信頼関係を築く
【糖尿病・代謝内科】竹下 有美枝医師
(金沢大学恒常性制御学【旧第一内科】内分泌代謝内科)
-(前編)
代謝内科を目指した経緯

――まず、代謝内科を目指したきっかけをお聞かせいただけますか?
竹下(以下、竹):父親が内科の開業医なんです。父が地域の人に信頼され、感謝されている姿を見てきて、医師の仕事は社会に貢献できる誇らしい仕事だなと感じ、私も内科医を目指しました。入局した第一内科は消化器が主で、私も最初は胃カメラや大腸カメラなどの検査をメインにやっていましたが、父のようにもっと患者さんと向き合って、長い付き合いができるようなところを専門にしたいなと思い、代謝内科を選びました。
――具体的にどのようなところで、患者さんと向き合う科だなと感じますか?
竹:代謝内科では血糖に関わる様々な臓器を診るため、結果的に全身を診ることになります。また仕事での異動やストレス、妊娠・出産など、生活のちょっとした変化が採血の数値に表れることもあるので、患者さんの暮らしにまで踏みこんで話を聞く必要があります。食事療法や運動療法をする際には、患者さんの生活リズムに合わせた一番いい方法を提案して、本人にも納得してもらうことが大切ですから、じっくり患者さんと向き合うことが求められるんです。

患者さんと一生懸命向き合い信頼関係を築く
【糖尿病・代謝内科】竹下 有美枝医師
(金沢大学恒常性制御学【旧第一内科】内分泌代謝内科)
-(後編)
他科・他職種との連携
――今は糖尿病を専門とされていますが、一般内科も経験されたんですか?
竹:外来は糖尿病の患者さんをメインで診つつ、一般の内科も扱うという感じで対応してきました。市中病院のときは救急も担当しましたし、腰椎穿刺や骨髄穿刺など、様々な検査手技を経験してきました。糖尿病の患者さんは合併症が多いので、他科の先生と協力しながら患者さんを診ることが多いのですが、一般内科を経験したお陰で連携もスムーズにできるようになったように感じます。他科の先生に任せっきりにするのでもなく、けれど自分ですべて抱え込むのでもなく、必要なところはしっかりコンサルトしながら総合的に患者さんを診ていくのが大事ですね。
――金沢大学には、医師をはじめ、看護師・栄養士・薬剤師・臨床検査技師・理学療法士などが連携し、糖尿病の患者さんの生活習慣改善にあたる医療チーム「Team DiET」があるそうですね。
竹:はい。金沢大学では、糖尿病療養指導士の資格を持った方をはじめ、様々な職種を巻き込んだチーム医療に特に力を入れています。その一環として、一週間に一回、いろんな立場から患者さんの情報を共有する「DiETミーティング」という打ち合わせを行っています。医師が診療時間で話せることは限られているので、患者さんとより長い時間一緒に過ごせる他のスタッフから情報を共有してもらうことが、患者さんの治療に非常に役立つんです。チームのみんなが患者さんに寄り添い、患者さんの気持ちを受け止めてくれているから、私も医師としてより良い治療ができているんだなとつくづく思います。
患者さんとの信頼関係
―― 経過が長い疾患ほど患者さんとの信頼関係がとても大事だと思うのですが、信頼関係を築くコツは何ですか?
竹:患者さんの不満って、自分の話を聞いてくれないことにあったりもするので、やはりしっかり話を聞くことは大事だと思います。面白いもので、私が「コミュニケーションが難しいな」と感じていた患者さんのほうが、後から感謝してくださったりするんですよ。難しいと感じていた分、私自身が何とかしようと一生懸命だったんだと思います。その一生懸命さが患者さんにも伝わって、逆に信頼を得ることができたんだろうな、と思いますね。
また、糖尿病は「患者さんが主治医」という言葉もあるくらい、患者さん本人が自身の血糖コントロールについて一番わかっているという場合が多いんです。若い頃は、患者さんに教わることがとても多かったです。このようにしてある患者さんから教わったことを、今度は他の患者さんに教えてあげたりしていました。謙虚に、患者さんから学ぶという気持ちでいるのがいいんだと思います。
今後のキャリア
――仕事と子育てを両立されているんですね。
竹:はい。代謝内科は外来がメインになる場合が多いし、夜間の呼び出しなども少ないので、女性に合っている職場だと思いますよ。実は私、産休に入る前に、患者さんたちにとても励まされたんです。「丈夫な子を産んでくださいね」「出産後は戻って来てくださいね」と、中には安産のお守りをくださる方までいらっしゃって…。待っていてくれる人がいるのは嬉しいもので、私は出産後7か月で職場に復帰できました。
―― 今後の目標を教えて下さい。
竹:今、北陸三県の関連病院と一緒に臨床研究を行っています。2型糖尿病では日本人の臨床研究が少なく、欧米の研究データを元に作られた薬を日本の臨床でも使用しているんですが、そもそも欧米人と日本人って体型もインスリン抵抗性も全く違うんです。欧米のデータをそのまま日本人に当てはめるのではなく、日本人にあった治療法を見つけて、北陸から発信していきたいなと考えています。
2000年 金沢大学医学部卒業
2013年1月現在 金沢大学恒常性制御学(旧第一内科) 内分泌代謝内科 助教



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