病床を効率良く使う~退院支援と地域包括ケア~

地域で生活できるよう支援する

A:実は、数年前にうちの祖母が大腿骨頸部骨折で入院したんです。その時はたしか、手術の翌日からリハビリが始まっていました。早く退院するためには、こうした早期からの介入が必要なんですね。

B:早期離床は、術後の回復を早め、合併症を予防するメリットもあると聞いたことがあります。

T:はい。早期離床・早期退院(転棟)は、患者さんと病院双方にとって大きなメリットとなります。しかし、特に高齢者で介護度が上がってしまった場合などでは、急性期の治療が終わってもすぐに元の生活に戻れるわけではありません。その場合は、地域包括ケア病棟・病室や回復期リハビリテーション病院などへ移り、自立した生活が送れるようリハビリを継続します。ある程度ADLが向上すれば、在宅医療や介護を受けながら自宅で生活することができるようになるでしょう。自宅に帰るのが難しいケースでは、施設への入居も検討します。

いずれの場合も、地域の次の受け入れ先に円滑につなげられなければ、退院は困難になってしまいます。そこで近年は、入院前から看護師などが患者さんや家族と関わり、医師や看護師、医療ソーシャルワーカー、地域の施設やケアマネジャー、訪問看護ステーションなど様々な職種が話し合いながら、退院に向けて調整を行う「退院支援(入退院支援)」が行われています。

A:そういえば、祖母は実家で親と同居しているのですが、退院前にケアマネジャーさんなどが実家に来て、祖母が生活しやすい環境かどうか確認してくれました。これも退院支援の一環なんですね。

病床を地域全体でコントロール

B:Aくんのおばあさんが自宅に帰れたのも、急性期病院と地域の関係者との連携があったからなんですね。

T:そうです。Aくんのおばあさんのケースのように、医療、介護や介護予防、住まいや生活に関する総合的な支援を受けながら、その人が住み慣れた地域で自分らしく暮らせるようにするための仕組みが地域包括ケアシステムです。退院支援だけではなく、例えば自宅や施設に戻った人にまた医療が必要となったら、地域包括ケア病棟などで受け入れ、また地域へと帰っていく…という循環も重要です。

ある意味、自宅や施設のベッドも、地域の医療資源の一つと捉えることができます。病床という観点で見ると、地域包括ケアシステムは、その時どきで地域の様々な機能のベッドの中で適切なものを選び、地域全体でベッドコントロールを行うことだと言えるかもしれませんね。

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