大学紹介

産業医科大学

【教育】哲学する医師・産業医の育成

産業医科大学 教務部長 尾辻 豊

尾辻教授

産業医科大学(医学部)の目的は「産業医学の振興」および「勤労者の健康増進」であり、建学の使命は「人間愛に徹し、生涯にわたって哲学する医師の養成」です。医師の診療には診断・治療のスキルだけでなく病める人の心に対応する術も求められ、医師は診療だけでなく教育・研究も求められます。産業医科大学は以下の特色ある教育を行っています。医学教育による偏りに対処するために総合教育を行っていますが、この中でも医の倫理を1年生から4年生まで通して教育しています。習得すべき知識および技能は増加の一途をたどっていますので、モデルコアカリキュラムに対応した基礎および臨床医学教育を包括的に行っています。講義だけでは不十分ですので、1年生のEarly Medical Exposureから6年生のClinical Clerkshipまで多くの基礎および臨床医学の実習を行っています。この中でリサーチマインドを育むために基礎研究室配属を3年生で10週間にわたり行っています。5年生の臨床実習において外国(韓国)医学生を受け入れて本学学生といっしょに英語で臨床実習教育を行い、6年生の臨床実習においては本学学生を韓国医学校に派遣して、国際教育を行っているのも本学の特徴です。また、産業医学教育を1年生から6年生まで行っており、本学卒業生は医師国家試験に合格すると同時に産業医の資格が付与されます。他学卒業生が取得できる産業医の資格は更新が必要ですが、本学卒業生の産業医資格は更新の必要がなく、本学の産業医学教育システムは恵まれています。全ての教育プログラムに共通していますが、「哲学する」あるいは「自ら学ぶ」能力を育成するためにbidirectional教育を目指しています。このようにして本学では「人間愛に徹し、哲学する」医師・産業医・研究者を育成しています。

【研究】産業医学研究のメッカを目指して

産業医科大学医学部 第1生理学講座 教授 上田 陽一

上田教授産業医科大学は、“産業医学の振興と優れた産業医の養成”を目的として設立されたオンリーワンの医科大学です。本学医学部の卒業生は、産業医学総合実習を受講することにより産業医選任資格を取得することができ、多くの卒業生が産業医学関連の実践や研究活動に携わっています。

産業医科大学の研究体制は、医学部基礎医学・臨床医学講座、産業保健学部、大学院医学研究科、産業医生態科学研究所、それに共同利用研究センターなどの充実した教育研究支援施設が整備されています。

21世紀の産業医学は、疾病予防を重視し、メンタルヘルスを含めた働く人々の健康保持・増進を実践することにあります。

本学医学部では、3年生の後期(10月~12月上旬)に基礎研究室配属が実施されます。学生が希望するテーマを掲げる研究室(医学部基礎講座および産業生態科学研究所研究室)で自らの体を動かして朝から晩まで研究生活を体験します。中には、その研究成果をまとめて専門学会で発表をすることもあります。産業医学関連のテーマの例を挙げると、産業医学への免疫学的な観点からのアプローチ(免疫学・寄生虫学)、環境有害化学物質の生体影響(産業衛生学)、ナノ粒子が生体に及ぼす影響(労働衛生工学)、睡眠時無呼吸症候群のスクリーニング(呼吸病態学)などです。学生にとって基礎研究室での2か月余りの経験は、医学生のうちに研究マインドを養成するよい機会となっています。私自身もこの基礎研究室配属を第1生理学講座で経験し、その魅力に惹かれて基礎医学研究を志した卒業生の一人です。

さて、最後に私たちの講座で取り組んでいる研究テーマを紹介します。私たちは、ストレスと神経内分泌、生体の恒常性維持(ホメオスタシス)とその破綻という視点で基礎研究を行っており、産業医学と関わるテーマでもあります。具体的には、動物実験により蛍光タンパクを用いて神経分泌ニューロンとその神経活動の可視化に取り組んでいます。

【学生生活】いま注目される産業医学を、多様な視点から学ぶ

産業医科大学医学部 5年 芦田 日美野
同 4年 中村 勇輝

中村:産業医科大学は名前の通り産業医を養成するという側面があります。入学前は産業医ってブルーカラー労働者の健康状態を診るのかなと思っていたんですが、入学後に勉強していくにつれてホワイトカラー労働者のメンタルヘルスや過重労働なども重要なテーマになっていることを知り、色々な産業医のあり方があるんだなと思いました。

芦田:私は今ポリクリを回っているんですが、そのなかで健診機関での実習がありました。私は東京の健診機関で肥満・糖尿病・高脂血症・高血圧の「死の四重奏」を患った方の面接指導に同席させてもらったり、先生がこれまでに経験した事例を紹介してもらってディスカッションをしたりして、産業医学の重要性を痛感しました。

中村:ただ、全ての診療科に産業医学を結びつけて学んでいると思われているかもしれないんですが、他の大学で学ぶような医学の知識は僕たちも同様に学びます。それに加えて産業医学がカリキュラムにしっかり組み込まれていて、ゆくゆくは産業医の永久ライセンスを持つことになります。

芦田:女子学生同士で話をすると、育児をしながらでも働きやすいという産業医のメリットは売りだという話題がよく出ます(笑)。実際、企業内育児所が整備してあることも多いですし、労働時間が決まっているのでキャリアを捨てなくていいですからね。

中村:うちの大学の特徴として、病気のバックグラウンドを勉強できるという点が挙げられると思います。なぜその病気になったのか、その原因を勉強できるのが産業医学の魅力の1つですし、医療費の高騰を防ぐために国も予防医学に力を入れているので今後熱くなる分野なんじゃないかと思います。

産業医科大学
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