日医ニュース 第856号(平成9年5月5日)
第1回日医総研会議が、4月17日、日医会館で開催された。日医は、これまでに、日本医師会総合政策研究機構(日医総研)の構想をかかげ、情報ネットワークづくりや研究員の選定などの組織づくりを行ってきたが、新年度を迎えて、ようやくその概要が整ったため、今回の会議開催にいたった。
従来の政策立案方式、すなわち、行政当局が提案し、検討委員会、審議会等をとおして立案するやり方では、日医の意見は無視されるか、取り上げられても、きわめてわずかである。また、国会審議の場においても、現在の政治状況では、正論がかならずしも反映するとは思われない。日医は、21世紀に向けての医療構造の抜本的改革として、短期的課題と中長期的課題を提言しているが、早急に具体案を作成しなければならない。
日医総研の創設の目的は、地域における医師会員の持っている医療情報を基盤にして、国民に適正な医療を提供するために、地域に密着した医療政策を立案し、国民の選択によって、立法化するという政策決定の新しい過程を構築することである。
日医総研の組織は下掲に示すように、三つの部門からなる。
情報調査部門は、会員情報収集、経営実態調査、いわゆる、定点観測による医療機関総合実態調査を主たる業務とする。
政策研究部門は、各種のプロジェクトや委託研究の発案や調査研究、取りまとめ、政策立案、提言を主たる業務とし、各専門分野の非常勤研究員に重要な役割を果たしてもらう。
教育研修部門は、常勤研究員からなる日医総研事務局の強化、充実のため、ハーバード大学公衆衛生大学院派遣事業をはじめ国内外研究生の研修事業を行う。
人員構成は、常勤研究員、非常勤研究員、客員研究員からなる。当面、事務職員は兼務で常勤研究員となるが、2〜3年後を目標に、日医総研専任とし、日医総研が独立した組織に発展するための基盤となる方向で準備する。
日医執行部、日医内会議、委員会と日医総研との関係は、相互に連携を保って構成されるが、日医執行部が政策立案者であり、代議員会が最終決定者であるという位置づけに変わりはない。ゼロからの試みとなる日医総研であり、現在は、一歩一歩目標に向かって体制を整えていかなければならない状況にある。
なお、今後、必要に応じて会合をもち、組織の充実を図ってゆくことになっている。
目 的
国民に適正な医療を提供するため、日本医師会が医療政策を研究・立案し、国民の選択によって立法化する政策決定の新しい過程を作り上げる。
組 織
・情報調査部門
・政策研究部門
・教育研修部門
人員構成(五十音順)
・常勤研究員 天瀬 文彦(日本医師会秘書課会長秘書)
田中 幸子(日本医師会局長付調査室審議役)
沼澤 勝美(日本医師会情報企画課課長)
能登 裕二(日本医師会国際課調査役)
・非常勤研究員 池上 直己(慶応義塾大学医学部医療政策・管理学教室教授)
大道 久(日本大学医学部医療管理学教授)
武見 敬三(東海大学平和戦略国際研究所教授)
田中 滋(慶応義塾大学大学院経営管理研究科教授)
西村 周三(京都大学経済学部教授)
マイケル・R・ライシュ(ハーバード大学公衆衛生大学院教授)
・客員研究員 若干名