日医ニュース 第863号(平成9年8月20日)

医療政策決定の新たな過程の確立をめざし

与党協に日医の『医療構造改革構想』を提出

 

 与党医療保険制度改革協議会(与党協と略す)は、平成9年8月末をめどに「医療制度抜本改革案」を作成することになっているが、これに先立つ7月29日、糸氏副会長は与党協に赴き、日医独自の「医療構造改革構想」を丹羽雄哉座長(自民党)に提出した。さらに、同日夕刻、緊急記者会見を開き、坪井会長が「構想」提出の意義を述べ、各論的事項について記者の質問に答えた。(関連記事)

 

 これまでの医療政策が、行政主導型の国家権力によってのみ決定されてきたことは問題である。われわれは、その方法が間違いだといっているのではなく、その政策だけが唯一無二で国民に選択の余地を与えない、そういう方法は改めるべきだ。いい換えれば、医療政策の決定過程の根本的な変革を主張し、それを旗印にしているわけである。

 

 社会保障制度の内容については、いかに改変の波が高かろうと、「変えてはいけない部分」がある。そのことを国民にも、為政者にも知ってもらわなければならない。これが、日医の基本的な態度であり、政策の最も重要な部分でもある。

 

 このような立場から、われわれは地域の医師の日常診療のなかから生まれてくる医療情報、あるいは地域特性などを十分把握し、それらを折り込んだ医療政策、すなわち、物より心に重点をおいた医療政策を提示している。

 

 われわれが構想した政策と、行政(厚生省・大蔵省など)の政策とが相対峙した形で、政府や与党協が国民のために医療制度を法制化する場合の選択肢を提供する、これが本日の「構想」提出の理由である。

 

 医療構造は、施設、機能、経済の三つから構成されている。したがって、単に経済を変えるだけでは、改革は達成できない。医学医療の進歩に即した提供体制や、医療技術に対応する正当・適切な評価ができる医療経済、具体的にいうならば、診療報酬体系などの検討が伴ってこそ、はじめて国民の期待する医療の提供が可能になる。そのような視点に立って、われわれの政策を「医療構造改革構想」と称することにした。

 

 医療構造改革には、社会保障制度の見直し、財政再建・行政改革、その他の諸々の改革がドッキングしてくる。しかし、例えば国民負担率の問題なども、財政の立場からだけではなく、医療構造改革の視点に立って考えることが必要である。

 

 「構想」に書かれた政策の大部分は、日医総研の研究成果によるところが大きい。今後は、さらに項目別の肉づけを図り、より完全なものにしていきたい。

 

 私は、かねてより自民党や与党協の丹羽座長に対し、与党協の作った改革案が、「日医の考え方が十分に反映され、中長期的な展望もそれを基盤に行われている」と評価できるものであれば、日医として、それに対して感想を述べるようなことはしない。しかし、もし、与党協が、行政側が作った政策を下敷きにした改革案を出すようなことがあれば、われわれは決して同意しない。あくまでも、日医が提出した「構想」と厚生省の改革案等を同列において、十分検討したうえで与党協の改革案をつくってほしいと主張してきた。

 

 これに対して、与党協から、「勉強する時間がほしいので、なるべく早く提出してほしい」との希望があり、本日の提出となった。

 

 その後、記者団から質問があり、薬の問題について、坪井会長は、「物としての医薬品の取り扱いについては、かなり踏み込んだ改革をしていきたい。薬価差を潜在技術料として、それを医療の経営原資の一部とすることからの脱却を図り、物と技術の分離という考え方を貫き通したい」との基本的姿勢を明示した。