日医ニュース 第863号(平成9年8月20日)
都道府県医師会社会保険担当理事連絡協議会開催
「薬剤一部負担」等について説明
外来での薬剤一部負担の新設を主内容とする「健康保険法の一部改正」が、9月1日から施行される。そこで、これへの対応を主題にした連絡協議会が、8月6日、日医会館大講堂において開催された。
青柳常任理事の司会で開会。冒頭、坪井会長は次のようにあいさつをした。
「今回の健保法の一部改正に当たっては、国会筋で法案が衆・参両院を行ったり来たり、いろいろと変更されたりして、先生方も大変やきもきされ、不満も多々あることと思う。本日は、法改正の経緯を糸氏副会長が、また、改正内容を菅谷常任理事が説明することになっているので、忌憚のない意見・質問を出していただきたい。そして、会員の皆さんへの伝達方をよろしくお願いしたい。
日医は、7月29日、与党医療保険制度改革協議会に『医療構造改革構想』を提出した。われわれは、医療全体を抜本的に改革すべきであるとの理念に基づいて、改革案を作成した。本日、厚生省の改革案を見たが、やはり大きな疑義があり、心配なところも多々見受けられる。今後は与党協議会の場において、それらの諸点を明らかにするとともに、関係者の理解を求め、医療構造改革を間違いない方向に持っていくよう、全身全霊を尽くして取り組んでいくので、ご指導、ご支援をお願いしたい」。
健保法の改正に至るまでの経過概要
次いで、糸氏副会長が、「健保法の改正に至るまでの経過概要」と題して、次のように解説した。
「昨年の暮れに与党協の丹羽座長が発表した『丹羽私案』は、国民の立場、患者サイドに立って医療保険制度の改革に取り組んできたわれわれとしては、どうしても納得できないものであった。特に、患者負担の軽減を求め、政治に強く働きかけた。改正案は、衆・参両院において修正を受け、最終的には本日、説明するような形になった。もちろん、われわれも事務の煩雑など大きな不満をもっているが、国民皆保険堅持という視点から止むなく、苦渋の選択を行った。会員の理解をお願いする」。
健保法の一部改正について
次いで、菅谷常任理事が、改正の具体的内容について説明した。
「最大の焦点は、新設された『外来での薬剤の一部負担』である。薬剤の一部負担は、免除対象者〔6歳未満の小児、老人医療対象者のうちの低所得者〈老齢福祉年金受給者〉〕を除いたすべての『外来』患者に適用される。しかし、薬剤科が包括して算定される療養〔老人慢性疾患外来総合診療料、寝たきり老人在宅総合診療料、運動療法指導管理料など〕では、薬剤一部負担は課されなく、院外処方の場合にも薬剤負担はなく、処方せんの『処方』欄に(免)と記載することになっている。逆に、包括点数の算定対象である患者が、急性増悪等により出来高による算定となった場合は、その時点から薬剤一部負担が課されることになる」。
薬剤一部負担については、いくつかの想定事例を挙げて、薬剤の種類数、内服薬の日数の算定方法を、さらに、一剤が一定額(205円)以下の場合の見なし措置、薬剤一部負担の限度額(いわゆる逆ざやの解消)、診療報酬請求書・同明細書の記載の仕方等についても説明した。
菅谷常任理事は説明の結びとして、「今回の薬剤一部負担方式は、多くの矛盾を含んだまま決められ、しかも事務の煩雑化を招くなど、まことに遺憾としかいいようがない。今回の薬剤一部負担方式は、理論的に決められたものではなく、単なる『約束ごと』である。したがって、申しわけないが、このままの形で受け入れていただくほかはない。このような方式は一日も早く廃止しなければならない、そのために努力したい。厚生省からは、一部負担の計算方法をレセプトに記載するよう求めてきたが、これ以上の事務の煩雑化には応じられないとして断った。受け取った金額だけを記載すればよいことになっている」旨、述べた。
関連質疑
次いで、質疑応答に移り、はじめに、文書での質問に対して、回答が行われた。質問は、「同日再診での老人外来の一部負担金の徴収の可否」「同日再診の場合の薬剤一部負担金の徴収」「外総診から出来高(急性増悪によって)に移った場合の薬剤一部負担の取り扱い」「205円ルールと薬剤数の数え方」などであった。
引き続き行ったフロアからの質問では、それぞれの質問者がすでにいろいろなケースについて試算を行い、その適否を問う形式のものが多かった。また、外用薬についても、細かい質問があった。
経過のなかで、患者さんへの説明文書として、窓口ポスター「9月から健康保険法等の規定に基づき患者さんの負担額が変わります」および日医作成の「患者のみなさんへ」が紹介された。菅谷常任理事から、「今回の質問も含めて、なるべく早い時期に薬剤一部負担に関する『Q&A』を作成し、配布する予定である」との発言があり、質疑を終わった。
最後に、糸氏副会長が、「薬剤の一部負担については、今後、いろいろと重要な問題も起こってくるかと思うので、その際には日医担当者に連絡いただきたい。一緒に解決に当たりたいと思う。一日も早く、このような煩瑣な制約から抜け出すべく、最大の努力を傾けたい」旨の総括があり、閉会となった。