日医ニュース 第863号(平成9年8月20日)
日医は、本年4月に日医総研(日本医師会総合政策研究機構)を発足させた。それ以来、数々のプロジェクトを作成し、活動しているので、前回に引き続き、報告する。
情報化検討委員会
本委員会は坪井会長の日医総研(シンクタンク)構想に基づいて設置されたプロジェクトである。すなわち、日医に不可欠な機能としての情報収集とその管理、そして評価機能をシステム化して、行政主導の医療政策に対峙し、国民の意思を反映した日医としての政策提案を可能にする目的をもつ。
この理念のもと、平成8年6月発足以来、毎月1回のペースで委員会を開催して検討を重ね、本年3月、第一次中間報告をまとめた。
その内容は、医師会情報化に関する基本的考え方として、「国民の健康」を守っていくためには、一貫性のある保健・医療および福祉サービスの計画、実施および評価を情報管理面から支援していく日医、都道府県医師会、郡市区医師会を結んだ情報ネットワーク化が必要であるとしている。そして、今後の情報化を検討するための認識として、調査および対応すべき社会集団を 1)各医師会・医師会員、2)非医師医療関係者、3)製薬業界、4)医療機器製造業界、5)患者およびその家族、6)政府、7)財界、8)国民(マスコミ)に分類し、医師会情報化のための日医の行動計画を提示した。
また、医療インテリジェンス・システム(MINS)の構築を提言している。これは、政策策定のプロセスのなかで最も基本的な役割を果たす「環境分析」と「資源分析」に関する情報を組織内で体系的に収集・分析・評価するシステムを整備しておき、政策機構が必要とするときに必要な情報を迅速に提供可能とするシステムをいう。
医師会総合情報ネットワーク化構想については、喫緊の課題として提唱され、医療システム研究委員会の協力のもとに、7月4日、都道府県医師会情報システム担当理事連絡協議会を開催し、その一歩を踏み出した。
今後は日医総研におけるリサーチャーにデータなどを提供する情報調査機関として、各分野での活動が期待されている。
〈委員〉
(三重大医学部教授)
飯塚 弘志(北海道医副会長)
坂本 徹朗(常磐大短期大学部経営情報学科教授)
原 寿夫(福島県医常任理事)
古庄 晋二(潟Aシストシステム研究所開発担当課長)
山本 勝(名古屋工業大工学部教授)
[担当・小池(昭)常任理事]
医師需給に関する検討委員会
医師需給に関する検討委員会(プロジェクト)は、平成9年5月13日に全国8ブロックの代表を含む委員11名で発足した。
第1回の委員会では、坪井会長から「21世紀の少子・高齢社会における医師需給はいかにあるべきか」について検討し、理論構築するよう諮問がなされ、鋭意検討を開始したところである。
[設置の目的]
日医がこの委員会を設置した目的は、厚生省の医療保険制度改革の一環として出ている保険医の定数制や定年制等、医療保険財政の見地からではなく、医療提供体制の一環として、医師の年齢構成や地域分布等地域医療に密着した立場から、単に数の議論だけでなく、現状を見据え、10年、20年を視野においた需給計画を幅広く検討し、日医としての見解を社会にアピールしていくためである。当然、医師の研修問題にも踏み込んで議論するようになると思われる。
答申は、できれば比較的早い時期にとりまとめて、坪井会長に提出する予定である。
[現状]
医師需給については、これまでも、厚生省、日医で検討を重ねてきているが、実際には、これらの意見どおりに進捗していない現状にある。
こうしたなか、6月の財政構造改革に対する閣議決定で、医師需給問題が具体的に打ち出されている。これはまさに、経済的視点で需給問題を論じているものである。
[今後の見通し]
日医では、すでに5月20日「医療構造改革構想」を公表しているが、そのなかの改革の具体的方法における医療提供体制の改革において、「地域医療の確保に配慮しつつ、医師需給計画の見直しを検討する」ことを提言している。当然のことながら、本委員会での答申の主旨はこのなかに包含されて、日医の意見として、国や国民に提示されることになる。
〈委員〉
赤倉 昌巳(北海道医常任理事)
安藤 祐介(宮城県医理事)
大久保幹雄(山梨県医副会長)
柳内 嘉(東京都医副会長)
上野 昇(愛知県医理事)
武田 覺(兵庫県医常任理事)
平松 幹敏(愛媛県医常任理事)
嶋田 丞(大分県医常任理事)
前川 正(国立学校財務センター所長)
正法地孝雄(広島大総合科学部生物統計学教授)
曽根 啓一(前自治医大公衆衛生学教授)
[担当・津久江常任理事]