日医ニュース 第871号(平成9年12月20日)

勤務医のページ


平成9年度全国医師会勤務医部会連絡協議会
「医療の機能分化」をテーマに

 日医主催の平成9年度全国医師会勤務医部会連絡協議会が,10月25日,「医療の機能分化―地域医療における勤務医の役割―」をメインテーマとして,福岡県医師会の担当で,福岡市のエルガーラホールにおいて開催された.参加者は374名であった.
 坪井栄孝日医会長の主催者としてのあいさつ(森岡恭彦副会長代読)の後,関原敬次郎福岡県医師会長が歓迎のあいさつをし,来賓あいさつを地元福岡県知事と福岡市長が行った.

特別講演(1)
「医師の養成と生涯教育」

 森岡副会長は,医師急増問題に触れ,「大学入学定員削減という議論にとどまらず,即効性のある具体策として,保険医定年制という問題も突きつけられている」と述べた.ただ,医師の充足率に地域・施設間格差があることから,医師総数の削減と偏在の問題は別枠で考える必要があるとして,一律の施策展開を戒めた.
 さらに,勤務医が日医会員の半数を占める現状から,勤務医とか開業医とかいっていられないとの認識を示しつつ,日医の体質も変える必要があることを述べるとともに,勤務医にも,「医の一翼を担う立場」での協力を求めた.

日医勤務医委員会報告

 濱田和孝委員長が,坪井会長の諮問「地域医療における医療の機能分化―特に,勤務医の在り方―」についての答申がまとめの段階に入っていることを述べ,その間の議論の概要にも触れた.本年2月に行った勤務医現況調査についても,平成5年,7年の調査結果と比較しつつ,その要点が報告された.

福岡県勤務医アンケート調査報告

 三谷哲美福岡県医師会理事から,配布数3,000,回答数1,916のアンケート結果について,勤務医が労働過重であること,日医の生涯教育については,情報が不十分なこと,医師の定年制については,条件つきながら賛成派がやや多いこと,医政活動に不満が多いことなどが報告された.

特別講演(2)
「日本型保健・医療・福祉複合体―医療の機能分化との関連にも触れながら」

 二木立日本福祉大学社会福祉学部教授が,今後21世紀に向けては,保健・医療・福祉の枠組を広げて,機能分化や連携を考える必要があること,医療の質の向上だけでなく,効率化の追求も求められることを述べ,日本にのみ存在する民間医療機関主導の「保健・医療・福祉複合体」の重要性を強調した.

シンポジウム「病診連携」

 最後に,池田俊彦福岡県医師会勤務医部会長の司会で,シンポジウムが行われた.
 草場公宏宗像医師会病院長は,医師会病院を中核とした地域医療活動のなかでの病診連携の実態を述べ,病診連携における医師会病院の意義を強調し,併せて,勤務医の役割についても論じた.
 武田仁良久留米大学病院副院長は,高次機能を持つ特定機能病院でありながら,講座別診療体制の廃止や地域医療連携室の設置など積極的に病診連携の強化を計り,紹介率70%以上を達成,逆紹介も多く,成果も挙げていることを述べた.
 朔元則国立病院九州医療センター診療部長は,同病院地域医療研修センターの重点事業として,福岡県医師会との共催で行っている地域医師のための生涯研修セミナー実践の長い経験から,ともに学ぶという視点からの生涯教育上の病診連携について,その意義の大きいことを述べた.
 稲垣忠朝日新聞編集委員は,病診連携を,「仲間内の患者紹介」から「地域のシステムとして機能するもの」にすべきことを述べ,幅広い医療情報の公開と医療サービスの質を管理する医師の相互評価の重要性を強調した.また,勤務医のあり方について厳しい要望を述べ,いっそうの自覚と責任感を求めた.

コメント

 フロアからの発言も大変活発で,熱気のある有意義な討論が展開された後,小池昭彦日医常任理事のコメントでしめくくられた.
 小池常任理事は,各シンポジストそれぞれに対し,丁寧にコメントし,次に,病診連携は,あくまで患者さん中心であるべきことや法律的な対応や診療報酬上の問題も軽視できないことを強調した.
 さらに,マスコミの報道のあり方についても触れ,基本的に,日本の医療,あるいは国民の健康権というものを伸ばしていくような形の報道こそがマスコミの使命であろうと述べた.
 その他,かかりつけ医や地域医療支援病院の問題についても言及した.


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