日医ニュース 第872号(平成10年1月5日)

年頭所感

日本医師会長
坪井 栄孝


 平成10年の初春を迎えるに当たり、会員の皆様に心からご祝詞を申し上げます。

 昨年来、わが国は未曾有の変革期の中で、21世紀への指針を懸命に模索している状況が続いております。

 その間にも経済状況は悪化の一途を辿り、金融不安の傾向はますます強まり、アジアをはじめ世界各国に深刻な影響を与えております。

 橋本内閣はわが国の危機的状況を打破するために、行政改革、財政構造改革、経済構造改革、社会保障構造改革、金融システム改革、教育改革の6大改革の遂行を掲げてスタートしましたが、その後の動向を見るかぎり、当初の改革に対する理念が後退してしまった感は否めません。財政構造改革会議の報告をみても、社会保障という社会的に弱い立場の人がもっとも必要とする部分に、一方的にしわ寄せを来すような内容となっており、政府の姿勢に強い疑問を抱かざるを得ません。

 一方、このような社会、経済状況の中、全国の医師会は戦後新しく発足してから50周年という節目の年を迎え、昨年から今年にかけて各地で記念式典等が開催されております。

 極めて物資の乏しい状況の中で新たなスタートを切った各地の医師会は、医療を取り巻く環境が激しく変化する中、半世紀にわたり医師会活動を展開し地域医療の礎を築き、医療提供体制を整えてまいりました。全国の医師会員の真摯な努力は、国民の健康を守り続けるとともに、わが国を世界一の長寿国に押し上げる原動力となっていると確信いたします。

 日本医師会も平成9年11月1日、天皇皇后両陛下のご臨席を仰ぎ、設立50周年記念式典を挙行いたしました。

 その際、陛下から『50年にわたり国民の医療のため尽くされてきた努力を深く多とし、』というお言葉を頂戴いたしました。

 私は陛下のお言葉に、われわれ医療担当者に課せられている責任の重大さをあらためて痛感した次第です。

 われわれすべての医師会員ならびに医療関係者は、陛下のお言葉を国民の負託と受けとめ、今後とも国民の健康を守り続けるという決意を新たにしなければならないと考えます。

 日本医師会は、21世紀に向けて真っ向から変革に挑み、国益のための医療構造改革を成し遂げるべく、強力な医療政策集団として全力を傾注してまいる所存であります。

 会員の皆様の深いご理解とさらなるご支援をお願い申し上げ、新年のごあいさつとさせていただきます。

 


日医ニュース目次へ