日医ニュース 第872号(平成10年1月5日)

医療計画無視の病院開設に対し

与党に要望書を提出


 平成9年12月5日、鹿児島地方裁判所は、某特定医療法人の「病床数過剰地域における病院開設許可」をめぐる訴訟において、医療計画に沿って調整に努めている鹿児島県の対応は、「不作為」の違法行為に該当する旨判決した。なお、熊本県では、同系列医療法人の同様な条件下における「病院開設許可申請」に対し、抗し切れずに県が開設を許可した事例が発生している。

 日医は、法律によって定められた医療計画を無視した、かかる強引な病院開設が容認されたことについて、「これでは医療計画が形骸化する。これまで病床規制に協力してきた全国の多数の医療機関の立場をどうするのか。厚生省は責任をもって、その解決に当たるべきである」と判断、8日、下掲の質問状を坪井会長名で厚生省の谷修一健政局長宛に送付するとともに、衆参両院の厚生委員会委員に対し要望書を提出した。さらに、9日の定例記者会見において、石川副会長が日医の見解を述べ、質問状および要望書を公表した。

 11日の参議院厚生委員会においては、宮崎秀樹議員が本件への厚生省の対応について質問。これに対し、谷健政局長からは、「医療計画に沿う形で医療提供体制が確保されるよう手続を明確にすることも含めて各県を指導する」旨、また、高木保険局長からは、「医療計画を無視して開設を強行した医療機関には、保険医療機関の指定を拒否する」旨の答弁があった。

 その後、16日付文書をもって谷健政局長から、「新規病床数の制限等について、立法措置を協議中」であることを明らかにした回答がよせられた。

 

医療計画の形骸化について(質問)

 特定医療法人徳洲会が、医療計画における病床過剰地域において病院を開設する目的で、県知事の勧告にも拘らず申請を強行し、これを受けて熊本県では県知事が開設許可を行ったこと、また、鹿児島地方裁判所における判決は、都道府県の医療計画にも大きな影響を与えることは必至であります。

 これまで、多大な時間と労力を費やして各都道府県で作成してきた医療計画は形骸化し、地域医療は大混乱となります。

 このような事態に立ち至ったことは、貴省の責任であり、誠に遺憾であります。

1、この事態に対しての貴省の対応について

2、今まで、医療法の規定に基づいて必要病床数による病床規制を遵守してきた医師への貴省の責任について

の2点について、早急にご回答を賜るようお願いいたします。

 

要望書

 最近、熊本・鹿児島等全国各地において特定医療法人徳洲会による地域医療の破壊につながる医療計画の形骸化が頻発しております。

 いずれも県知事の勧告を無視して申請を強行し、裁判に訴えてでも開設許可を得ようとするものであります。

 このような殴り込み的手法を許す背景は現行法体系並びにその運用に根ざすものと考えられます。

 特定医療法人徳洲会の手法に対して適切な行政対応がなされなければ、病床規制を遵守してきた地域医療のシステム化は破壊され21世紀に向けた医療構造改革は頓挫することが必定であります。

 議会並びに行政当局の断固たる抜本的措置を要望するものであります。

 


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