日医ニュース 第875号(平成10年2月20日)

学校医制度創設100周年記念式典

時代に適応した「学校保健」への転換を


 1898年(明治31年)に学校医制度が創設されてから本年でちょうど100年。その記念式典が、1月24日、日医会館1階大講堂において、町村信孝文部大臣の臨席を得て開催された。

 

 式典は、本吉常任理事の司会ではじまり、冒頭、坪井会長は、次のようにあいさつした。

 「今日の学校保健の充実と発展は、児童・生徒の健康の保持・増進に真摯な努力を重ねられた先輩諸氏の賜物であり、そのご功績に対し、衷心より敬意を表し感謝したい。今日の学校教育には、ますます複雑・多様化した難問が山積し、その解決のために、学校保健にも大きな期待と関心が寄せられている。少子高齢社会における『学校保健のあり方』も大きく転換していかなければならない時にきている。100年の長さと重みを感じつつ、今後も、学校医諸氏のいっそうのご努力・ご活躍を期待したい」。

 

学校医の学校教育への支援と参加を

 つづいて、町村信孝文部大臣があいさつに立ち、「日頃から、学校保健の中核としてご尽力いただいた学校医の先生方のご功績に対し、深く敬意と感謝を捧げたい。今日の生活環境の変化は、児童・生徒の心身の健康に対し、さまざまな影響を与えている。昨年の保健体育審議会答申においても、生涯を健康で生きるための組織的な健康教育の推進が提唱されるとともに、そのためには、学校医をはじめとする専門家の方々の学校教育への参加と支援の必要性・重要性が指摘されている。100周年を一つの契機として、ご尽力・ご協力をお願いしたい」と祝辞を述べた。

 次いで、文部大臣表彰に移り、都道府県医師会から推薦された197名(当日出席者147名)の学校医諸氏の紹介とともに、各ブロックの代表が登壇して、町村文部大臣から表彰状、坪井会長から記念品が贈られた。

 その後、被表彰者を代表して、形見重男香川県医師会長が謝辞を述べ、竹内常任理事の閉会のあいさつがあって、記念式典を終了した。

 午後からは、平成9年度学校保健講習会を開催し、坪井会長(石川副会長代読)、矢野亨日本学校保健会長から、それぞれ学校保健の重要性が指摘され、「本日の研修会が実りあるものになることを期待する」旨のあいさつがあった。

 

教育改革は、生きる力の育成をめざす

 第一席の特別講演は、石川忠雄慶応義塾大学名誉教授の「今後の教育のあり方」。座長は高石昌弘日医学校保健委員会委員長。

 石川氏は、「まず、今日の教育のなかで、『変えてはならないもの』『変えなくてはならないもの』を峻別することが大切である」と前置きし、「変えなければならないもの」として、従来の「教え込む」教育から脱皮して、「自ら探究し、自ら考える力」を育成する教育への転換を提言した。科学技術の進歩、社会変動、国際化などの教育環境の変動から解き起こし、現代の教育改革の大道を明示した。

 また、今後の学校保健分野については、自ら健康な生涯を生き抜く、「生きる力」の育成の大切さを指摘し、学校医活動においても、保体審答申の主旨を踏まえて、子どもたちが表出する種々な問題行動に対して、専門家の立場から、また、地域社会のリーダーの立場から、支援し指導してほしい旨、要請した。長年の大学での教育経験、教育界の先達的活動を基盤とした教育改革論として、多くの感銘と示唆を与えた。

 第二席として、シンポジウム「学校医に期待する」が行われた。司会は青木宣昭日医学校保健委員会副委員長。

 シンポジストは、「学校長の立場から」佐野金吾新宿区立西戸山中学校長、「保健主事の立場から」壺井忠雄全国学校保健主事会会長、「養護教諭の立場から」中村道子全国養護教諭連絡協議会顧問、さらに「学校医の立場から」福田濶京都府医師会副会長。

 各シンポジストは、それぞれの立場からみた学校保健のあるべき姿、問題点について、意見を披瀝した。いずれにも共通する学校医への期待として、「学校医の先生方には、今後とも、よりいっそう学校保健に目を向け、保健活動のみならず、保健教育にも積極的に参加してほしい」旨の意見が中心であった。

 次いで、会場との総合討論が行われ、午後4時半閉会となった。講習会出席者は261名にのぼった。

 


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