日医ニュース 第883号(平成10年6月20日)

−日医がインド、パキスタンの核実験に抗議−

核廃絶に向けて世界に呼びかけ


 日医は、先に行われたインド、パキスタンの核実験に対して、両国駐日大使及び両医師会に抗議を行うとともに、世界医師会、小泉厚生大臣にも要望書を提出した。

 

 日医は、先に行われたインド、パキスタンの核実験に対して、両国駐日大使及び両医師会に抗議を行うとともに、世界医師会、小泉厚生大臣にも要望書を提出した。

 日医は、わが国を代表する医師の学術団体として、全世界の人々を対象とした保健レベルの向上に努めながら人類に奉仕することを第一の使命としている。さらに、世界で唯一の被爆国の医師として、医療の側から核の脅威に対峙してきたことから、核実験、核兵器のもたらす人体の健康への由々しき影響が計り知れないことを誰よりも強く認識している。

 近年、世界医師会は1995年のインドネシア総会において、「核実験に関する決議」を採択したが、そこでは、各国医師会が医師の立場から核兵器の健康に及ぼす影響を自国政府に進言し、核実験の全面的中止を要請している。また、本年の世界医師会ウルグアイ理事会においても「核兵器に関する声明」が提出され、核兵器のもたらす破壊的影響に触れ、核兵器の廃絶を求めるこの声明を医師の国際組織として満場一致で採択したばかりである。

 このようななかで、インド、パキスタンの両国が地下核実験を強行したことはまことに遺憾であると同時に、全世界の医師が、その専門的見地から、人類の存亡に直接関わる核の脅威を改めて認識し、警鐘を発することを求め、地球上の核兵器の廃絶、および将来にわたり核実験が実施されないことを強く求めてゆきたいと考える。

 


抗議書

 世界的に核実験に対する非難、批判は増大しており、そのような状況の中で貴国が1998年5月11日と13日に強行した地下核実験に対し、14万人の会員を擁する日本医師会を代表し、強く抗議する。

 世界で唯一の被爆国として、医療の側から核の脅威に直接対峙してきた日本の医師たちは、核のもたらす人体の健康への由々しき影響が計り知れないことを誰よりも認識している。

 世界の医師を代表する組織である世界医師会では、すでに1995年のインドネシア総会にて核実験の廃絶を呼びかける決議を採択し、最近では第150回世界医師会理事会にて再度核兵器に対する反対決議を採択している。

 全世界の人々を対象とした保健レベルの向上に努めながら人類に奉仕することを使命とする医師として、人類の存亡にも関わる核の脅威を改めて認識し、貴国政府に対し、将来にわたって二度と核実験を実施することのないよう強く求める。

1998年6月1日  

日本医師会長 

坪井 栄孝

インド共和国

大使 シダード・シン殿

 


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