日医ニュース 第896号(平成11年1月5日)
薬剤一部負担
70歳以上が免除に |
---|
昨年12月20日に行われた、平成11年度予算編成に関する事前閣僚折衝において、宮澤喜一蔵相と宮下創平厚相は、平成9年9月に導入された外来患者の薬剤費一部負担制度について、本年7月から70歳以上の高齢者すべてを対象に免除することを確認した。これは、先に開かれた坪井栄孝会長と池田行彦自民党政務調査会長との協議で合意された「薬剤二重負担の取り扱いについて」(下掲)の内容を踏まえてのものである。これによって、かねてから日医が主張していた「薬剤の二重負担」の一部分(高齢者のみ)が解消されることになった。
平成9年9月の健康保険法の一部改正に伴って導入された外来患者の薬剤費の一部負担制度は、当初は、医療費の膨張に歯止めをかけることを目的としていたが、その影響が予想以上に大きかった。現行制度は、内服薬1日当たり2〜3種類30円、4〜5種類60円、6種類以上100円支払うこととなっており、6歳未満の小児と老人医療対象の低所得者に関しては例外とされている。これらの負担増を嫌って、通院を控える人が増え、薬剤一部負担による平成9年度満年度ベースの医療費節減は7900億円にのぼった。これは、通院へのアクセスの道を閉ざし、いたずらに疾病を重くすることにもなり、国民の犠牲の上に成り立っていた制度である。
また、この一部負担制度は、明らかに薬剤費の二重取りにあたる。例えば、健保本人は、薬代を含めた医療費の2割を自己負担しているのに、さらに薬剤費を上乗せして支払わされているのである。制度導入時から、日医はこの点を強く主張し、早急に再検討することを自民党に働きかけてきた。そこで、昨年8月27日、坪井会長と自民党幹事長および政務調査会長との間で「覚書」を交わし、早期解決に向けて動き出した。
今回の高齢者の薬剤負担免除については、この「覚書」の実現への第一歩であると評価しているが、日医は外来患者すべてに対する薬剤費の免除に向けて、今後も努力をしていく。
なお、この件について、12月22日の定例記者会見で糸氏英吉副会長は次のようにコメントした。
「薬剤二重負担の取り扱いについては、全国の医療機関に対して患者さんから非常に多くのクレームが寄せられていた。クレームの主たるものは、薬剤負担の経済的な過重で、病院へかかりにくくなった、なんとかしてほしいなど、つまり、2、3割の負担以外に薬剤にのみ追加負担をかけるのは納得できないというものであった。
日医としては、当初からこの悪法はやめるべきだと主張してきた。審議会でも反対し続けてきたが、多数決で押し切られ、さらに、国会審議により強制され、患者さんにたいへんな負担を強いることとなった。
その影響で、一兆八千三百億円、薬だけでも八千億円近い医療費の抑制効果を得たが、一方、著しく受診が抑制され、それによって被害を受けたのは患者さんである。
そのようなわけで、日医は、1日も早く薬剤二重負担を取り除いてほしいと強く政府与党に要望してきた。財政上、すべての患者さんに対する免除はとても無理ということで、このたび、高齢者に臨時特例措置がとられることになった。高齢者の部分だけではあるが、予算折衝ギリギリの状況になって、ようやく政府はわれわれの主張を理解したといえよう」
|
1.恒常的に医療費負担の生じる老人について、現下の経済状況にかんがみ、抜本改革までの間のつなぎの措置として、平成11年度に、老人の薬剤一部負担の軽減を図るための臨時特例措置を講ずる。 2.この臨時特例措置の概要は、次のとおりとする。 (1)老人医療の対象者は、医療機関(調剤薬局を含む。以下同じ。)の窓口において、薬剤一部負担の支払を要しないものとする。 (2)医療機関は、支払を受けなかった薬剤一部負担の額を支払基金・国保連に請求する。 (3)国は、この臨時特例措置による影響について、保険料負担及び地方負担の増を招くことのないよう所要の措置を講ずる。 3.この臨時特例措置は、所要の法改正等を行った上、平成11年度中のできるだけ早い時期に実施する。 平成10年12月18日 自由民主党政務調査会長 |