日医ニュース 第896号(平成11年1月5日)
視点
ウサギ年の初夢
今年は卯年、すなわちウサギ年である。ウサギといえば、月を見てウサギが餅をついている姿を想像していた人々に、科学の進歩は現実の月面の姿を世界中のテレビに写して見せた。約30年前のことである。人類が月へ降り立ったという驚き以上に、それがテレビで放映されるという情報科学の進歩に大きな驚きがあった。
そして、はじめは小さな波であった第三の波は、みるみるうちに巨大な波となって、あっという間に全世界を覆いつくした。情報化社会の到来である。
今、日本では、空から天女が舞い降りてくる代わりに、人口衛星から何百チャンネルにも及ぶテレビ電波が情報の雨を降らしている。例えば、一日中映画ばかりを放映しているチャンネルが十以上もある。
ウサギ年の初夢として、日医が専用チャンネルを一つ持って、全国医師会会員のための情報をテレビを使って伝達するというのはどうであろうか。仮にJMA・TVとでも呼ぶことにしよう。
JMA・TVの活用方法は多岐にわたって考えられる。
まず、生涯教育である。各都道府県医師会、郡市区医師会で開催している生涯教育講座は、JMA・TVを通じて全国へ放映が可能である。したがって一つ一つの医師会は開催回数を減らして、あとは他の医師会主催のものをJMA・TVで見ればよいことになる。予算も手数も大幅に減って、より大きな成果が得られる。
保険点数の説明会、産業医、スポーツ医の講習会等にも活用できる。質疑応答などについては、現在でもコンピュータに接続することで双方向性の情報交換が可能であるが、差し当たっては、電話やFAXによって質問を寄せる形式で十分対応できよう。
事務的な情報伝達にもきわめて有効である。定時に放映する日医のニュースは、文字どおりニュースとして全国会員へ最新の情報を伝えることができる。日医の意見、日医総研の考えなどもいつでも伝えることができる。必要であれば、各種の会議や委員会なども全国に放映できる。
一定の条件をクリアすれば、一般の人々に対して、健康情報番組を放映したり、日医の考え方を伝えたりする対外広報活動としても利用できる。
このようにして考えていくと、このウサギ年の初夢はなかなかおもしろそうだ。しかも、そんなに現実離れをした夢物語ではなくて、実現が可能な夢のようにも思える。いやそれどころか、むしろ現実の情報化の波の方がもっと進んでしまっているのかもしれない。