日医ニュース 第897号(平成11年1月20日)

勤務医のページ


平成10年度都道府県医師会勤務医担当理事連絡協議会
勤務医・開業医の機能分担を明確に

 平成10年度都道府県医師会勤務医担当理事連絡協議会が昨年の11月27日,日医会館3階小講堂で開催された.
 坪井栄孝会長はあいさつのなかで,勤務医は大同団結によって医師会の組織強化を目的とするだけではなく,「医師・患者,そして国とが対峙していく時代である」と述べ,「勤務医と開業医が医療のためにお互い何をすべきかを論じてほしい」と要望した.
 さらに会務の執行にあたり,勤務医を新設の未来医師会ビジョン委員会とリンクさせ,「若い医師の活性化を削ぐような政策はとらない」と述べた.

勤務医が46%―日医会員構成―

 西島英利日医常任理事は,勤務医の入会・勤務医部会設立状況などについて報告した.
 それによると,平成10年8月1日現在の日医会員147,966人中,勤務医は前年比3.9%増の68,496人で全体の46.3%を占め,微増傾向が持続している.
 勤務医が50%以上を占める都道府県は,鹿児島(63.4%)など16道県であった.逆に最も低いのは千葉の21.9%.
 部会設立は現在26道府県で,一昨年の沖縄以降の新設はないが,今後の設立予定は神奈川,栃木,香川の3県である.
 一方,日医代議員,都道府県医師会の役員および代議員中の勤務医数は微増しているが,勤務医の役職登用は低率であった.
 次いで,本年度の全国医師会勤務医部会連絡協議会について,主催県の小林博岐阜県医師会常務理事からの報告があった.

連帯・共生の時代

 池田俊彦日医勤務医委員会委員長は委員会報告を行い,そのなかで日医代議員315人中,勤務医は23人,7.3%に過ぎないことに触れ,「勤務医の意見が現状ではなかなか通りにくいのではないか」と述べた.
 一方,勤務医の生涯教育申告が低率(31.9%)であることを指摘し,「勤務医は日医の到達目標にもっと協力すべき」と述べ,勤務医の理解を求めた.
 さらに同委員長は,「以前は医師会に対して,対峙・要求の傾向が強かったが,現在は大同団結のもと,参加・協力の気持ちが出てきた」と勤務医の意識変化を分析し,「今後は連帯・共生のスタンスが重要」と述べ,医師会の勤務医に対する理解を求めると同時に,勤務医の意識改革を喚起した.
 次いで,青森,富山,奈良,長崎の各県医師会から勤務医部会等の活動状況が報告された.


入・退会の簡素化をめざす(青森)

 青森県(長澤一磨常任理事)では,昭和63年に部会が設立され,平成3年,日医傘下初の全国医師会勤務医部会連絡協議会を主催した.現在の日医加入の勤務医は563名,全体の39.9%である.年1回の総会および学術講演会では,アップツーデートなテーマを取り上げ,講演やシンポジウムを行っている.
 部会活動としては,郡市医師会入・退会簡素化検討委員会を設け,勤務医の転勤に伴う医師会入・退会の簡素化や,会費格差の解消を検討中である.
 昨年は部会設立10周年にあたり,記念行事のなかで医師の県内定着を目指し,若手医師の卒前・卒後教育のあり方を討論した.

勤務医委員会が機能(富山)

 富山県(井出克樹理事)では,現在の日医加入の勤務医は546名,全体の42.6%である.勤務医の日医加入割合および役員数,代議員数など,この数年変化がみられない.
 部会はないが,その代わりに勤務医委員会が,勤務医の声を医師会執行部に伝えるべく,パイプ役となっている.
 また,平成7年から「県医報」に「勤務医のページ」を設け,好評を博している.病診連携も郡市医師会レベルではおおむね良好であり,現在のところ部会設立の動きはみられない.

開業医志向8%(奈良)

 奈良県(山本博昭理事)では,平成元年に部会が設立されてから10年になるが,県医師会レベルでは積極的には活動していない.
 現在の日医加入の勤務医は857名,全体の47.8%である.いわゆるC会員が160名と他県に比べ多いのが特徴である.
 勤務医向けに発刊している「奈良県医師新報」を通しての広報活動や,学術奨励賞による学術振興策は勤務医の医師会への認識を高めるのに効果的である.
 最近行った勤務医意識調査のなかで,「将来の開業志向」についてみると,16年前の同調査と比較して「したくない」が45%→68.5%が,「したい」の11%→7.9%を大幅に上回り,開業医離れがいっそう顕著となっている.

大学医師会が活路(長崎)

 長崎県(栄田和行常任理事)では,昭和61年に部会が設立され,平成元年,「勤務医の現実と将来」をテーマに第10回の全国医師会勤務医部会連絡協議会を主宰した.
 平成8年,長崎大学医師会が設立され,定款改正を行い,一郡市医師会に位置付けられた.
 大学医師会の会員数は,設立時184名であったが,現在は437名と倍増した.
 特徴的なことは,大学在籍のローテーター医師は大学医師会所属のまま勤務ができ,転勤に伴う地区医師会への入・退会を不要としたことである.
 これを契機として,生涯教育申告(一部一括申告)率アップ,福利厚生の充実がもたらされた.
 次いで,色川正貴茨城県医師会理事が,「打ち寄せる医療変革−勤務医の果たすべき役割」をテーマに来年度全国医師会勤務医部会連絡協議会を茨城県で開催するとあいさつした.

郡市区医師会費統一化を要望

 協議では,前年に引き続き郡市区医師会の勤務医の会費の格差が争点となり,統一化を望む意見が多く出された.
 谷口繁日医勤務医委員会副委員長は,同委員会が行った全国調査の結果,勤務医の医師会費の平均年額は都道府県で約24,000円(大学15,000円),郡市区で20,000円であったとし,「このあたりが妥当な額ではないか」との指針を示した.

大学医師会の実態調査を検討

 最後に,西島日医常任理事は大学医師会を対象に,「勤務医委員会を通して,調査やモデル事業をやってみたい」と述べ,地域医師会や日医入会のいわば「入り口」となる大学医師会のあり方を重視する考えを示した.


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