日医ニュース 第904号(平成11年5月5日)

自民党医療基本問題調査会・社会部会合同会議
「薬剤定価・給付基準額制」白紙撤回

糸氏副会長「国民にとって,喜ばしい決定」
石川副会長「600万名の窓口署名の成果」

 自民党の医療基本問題調査会・社会部会合同会議が,4月13日午前に開かれ,日医がその導入に反対していた「薬剤定価・給付基準額制」(いわゆる日本型参照価格制度)の白紙撤回を決定した.これを受けて,同日午後,世界医師会理事会出張中の坪井栄孝会長に代わり,日医会館で記者会見を行った糸氏英吉・石川高明両副会長は,「患者さんにとって,喜ばしい決定であり,600万名に及ぶ窓口署名の成果である」と高く評価した.

 合同会議のあと行われた記者会見で,丹羽雄哉調査会長は,みずから薬剤定価・給付基準額制の導入を断念することを提案し,了承されたことを明らかにした.さらに,会議の席上で確認されたことは,下掲のとおりであり,それらの内容は,坪井会長名ですぐに都道府県医師会長宛にファックスで知らされた.
 なお,丹羽会長は,連休明けにも,薬価制度の新しい改革案を提示する考えであると述べた.

日医での記者会見

 自民党の合同会議での決定を受けて記者会見に臨んだ糸氏副会長は,「かねてからわれわれが主張していたことが通ったという点では,非常によかったと感じている」と率直に喜びをあらわした.つづいて,「厚生省は,いわゆる薬価差があるから薬の濫用が起こり,高薬価シフトが生まれ,薬が無駄に使われていると非難を繰り返してきた.しかし,日医は,もともと医療機関が薬価差を得ることを望んでいたわけではない.その点について,いろいろ誤解があったようだが,これをなくそうという主張は,今後も変わらない.そういう意味では,将来,薬価差のない世界が生まれるわけであるから,1つの前進であろうと考えている」と評価した.
 また,日医が,薬剤定価・給付基準額制の導入に強く反対してきた理由として,「それは,混合診療的な考え方,あるいは,現物給付を否定するような考え方だからである.つまり,基準額以上の薬については,患者さんが全額負担しなければならず,患者さんのフリーアクセスを制限することになる.薬剤投与は,内科的治療の根幹をなすものであり,それを財政的な理由のみで制限を加える,あるいは,また,医師に対して,患者さんの懐を考えながら,治療,処方をさせるということがあってはならない」と強い口調でいい,今回の決定で,「その考え方がなくなるということで,われわれは安堵している」と述べた.
 最後に,「国民のためになる効率的で新しい薬価制度を,これからどう構築していくかということが重要である.今後,われわれもできるだけ協力していきたいと考えている」と結んだ.
 一方,石川副会長は,「先般,600万名の薬剤定価・給付基準額制導入反対署名を請願書として,衆議院・参議院議長に提出したが,自民党側でもそのことをかなり重く受け止めてくれたと考えている」とコメントした.
 日医は,薬剤定価・給付基準額制の撤回を求めて,昨年末から国民医療危機突破キャンペーンを展開していた.その一環として,窓口署名運動を行い,600万名もの署名を集め,多数の国会議員が紹介議員となって請願したことは,本紙の前号でも触れたが,日医では,その国民の意思が自民党を動かし,今回の決定に至ったものとみている.
 今後は,どのような制度ができるかに注目し,とりあえずは,連休明けに出される丹羽会長の提案に期待したい.

合同会議での了承事項

◎診療報酬,薬価,高齢者医療,医療提供体制の4つのテーマについて,平成12年度から段階的に抜本改革を実施していく.

◎その一環としての薬価制度改革については,次の方針に基づいて,薬価算定方式,患者負担のあり方等について総合的に検討を進め,早急に成案を得る.

○次の3つの案は,採用しない.

  • 厚生省が提案している「薬剤定価・給付基準額制」
  • 日医が提案している「医薬品現物供給制」
  • 米国政府や製薬業界が提案している「自由価格制」(市場価格・購入価格給付制)

○薬価差の解消を目指すとともに,薬価差に依存する医療機関経営からの脱却のために技術料の適切な評価を通じて経営の安定化を図る.

○画期的新薬とゾロ新,後発品でメリハリをつけるとともに,銘柄間の競争を促進する方向で,薬剤価格の適正化を図る.

○現物給付制度を堅持する観点から,一定の基準額を上回る患者負担は採らない.


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