日医ニュース 第904号(平成11年5月5日)

視点

感染症発生動向調査事業への協力を

 航空機大量輸送時代となり,また,輸入食品への依存度がきわめて高い状況にあって,わが国は感染症に対して国境を持たない環境にある.一方,最近30年間をみても,エボラ出血熱,エイズをはじめ新しい感染症が次々と発生し,さらに新A香港型H5N1の出現もあり,また,MRSA,結核など薬剤耐性を獲得した感染症の脅威も認識しなければならない.
 1897年に制定された伝染病予防法は,こうした状況に対応できず,法律として実効性のないものとなっていたため,本年4月1日より感染症新法が施行された.
 感染症新法では,感染症が重症度と感染力によって,1類から4類に分類され,今後,新たに発生するかも知れない未知の新感染症への対応も含まれている.また,入院治療に関しては,感染症類型によって,特定,第一種,第二種感染症病床でそれぞれ対応することになるが,患者の人権に関しても十分保護されたものになっている.1類,2類感染症の入院では,72時間を限度に応急入院措置がとられ,病状により10日以内の入院延長が必要な場合には,保健所に設置された感染症診査協議会でその必要性の診査をすることになる.地域医師会が,地域医療の立場から感染症診査協議会に参加しなければならない.また,危機管理として重要なことは,大流行が発生した場合の対応策である.感染症新法では,緊急やむを得ない理由があるときには,感染症指定医療機関以外の病院,診療所に入院させることができる.都道府県が策定する予防計画のなかに,感染症の集団発生時における一般医療機関の協力体制等を,具体的に盛り込むことが必要である.
 そして,地域医療に携わる医師として最も重要なことは,感染症発生動向調査事業への協力,すなわち感染症と診断した場合の保健所への届け出である.1類,2類,3類感染症は診断したら直ちに,エイズ等の全数把握の4類感染症は7日以内に診断したすべての医療機関が届け出ることになる.また,インフルエンザ等の発生頻度の高い定点把握の4類感染症は,指定届出機関のみが届け出ればよいことになっている.なお,届出に際しては,患者へ病態について説明し,届出を行う疾患であることに理解を得ることも忘れてはならない.
 感染症の拡大防止にあたっては,感染症情報の収集とその還元(公表)が不可欠であり,届出はその礎である.そして,的確な診断のために感染症に対する造詣を深めることが求められている.国民が健康で安心して生活できるよう,感染症について改めて研鑽していただくとともに,感染症対策への協力を切望するものである.


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