日医ニュース 第907号(平成11年6月20日)
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現在,医療に関する情報提供の必要性が叫ばれており,日医も,患者さんと医師との信頼関係を深め,適正な医療を推進するための医療情報提供の重要性を強く主張している.
医療に関する情報には,各種のものがあるが,そのなかで,今回は,「患者さんが医師を選ぶ時には,どのような情報が必要であるか」について考えてみたい.
まず,「かかりつけ医」を選ぶ場合について考えてみよう.一般に「かかりつけ医」に求められる主要な機能としては,(1)近くにいる(2)どんなことにでも対応してくれる(3)いつでも診療に応じてくれる(4)十分に説明してくれる(5)必要な時にはそれにふさわしい医師,病院を紹介してくれるなどが挙げられる.しかし,「かかりつけ医」というのは,制度でも基準でもなく,患者さんが医師を呼ぶ「呼称」であり,それは患者さんの意思によって選択されるべきものである.したがって,患者さんから「かかりつけ医」と呼んでもらえれば,その医師がどのような機能を持っているかは,本質的な問題ではない.その選択基準は,医師の持っている機能ではなくて,1人の患者さんと1人の医師という,人間対人間の関係である.
「かかりつけ医」の選択基準を一番わかりやすく表現すれば,「うまが合う」かどうかに尽きる.「うまが合う」かどうかは,その医師に直接接触してみてわかることで,医師の経歴や専門性などの情報とは無関係である.
次に,「専門の医師」を選ぶ場合について考えてみよう.例えば,患者さんが「高熱を出した」場合に,単なる「かぜ」かも知れないが,何か重大な病気のような気もするので「専門の医師」に診てもらいたいと考えたとしよう.ざっと考えられる「専門の医師」としては,感染症の専門医,膠原病の専門医,白血病等の血液専門医,がん等の悪性腫瘍の専門医などがいる.それらのなかから,患者さんがどの「専門の医師」を選択すれば良いかを正しく判断することは至難の業といえよう.
どうすれば良いか.正解は,「かかりつけ医」に相談することである.いつもと違う感じの「高熱を出した」患者さんを,どの分野の「専門の医師」に紹介すれば良いかを判断することは,「かかりつけ医」の重要な機能である.
患者さんにとって大切なのは,「膠原病の専門医」はどんな病気を診る医師で,その医師がどこにいるかという情報ではなくて,平生から信頼できる「かかりつけ医を選んでおく必要がある」という情報なのである.