日医ニュース 第911号(平成11年8月20日)

≪資料版≫
平成9年度国民医療費の概況(厚生省)

「国民医療費」は,当該年度内の医療機関等における傷病の治療に要する費用を推計したものである.この額には診療報酬額・調剤報酬額・入院時食事療養費・老人保健施設における施設療養費・老人訪問看護療養費・訪問看護療養費のほかに,健康保険等で支給される看護費・移送費等を含んでいる.
医療費の範囲を傷病の治療費に限っているため,(1)正常な妊娠や分娩等に要する費用,(2)健康の維持・増進を目的とした健康診断・予防接種等に要する費用,(3)固定した身体障害のために必要とする義眼や義肢等の費用,(4)老人保健施設における食費,おむつ代等の利用料は含んでいない.
なお,患者が負担する入院時室料差額分,歯科差額分等の費用は計上していない.

1 平成9年度国民医療費

国民医療費は29兆651億円であり,前年度の28兆5210億円に比べ5441億円,1.9%の増加である.
国民一人当たりの医療費は23万400円であり,前年度の22万6600円に比べ1.7%の増加である.
国民医療費の国民所得に対する割合は7.45%(前年度7.29%)である.

2 制度区分別国民医療費

(1)制度区分別にみると,医療保険等給付分は14兆159億円(構成割合48.2%),老人保健給付分9兆6762億円(33.3%),公費負担医療給付分1兆4008億円(4.8%)である.
  また,患者負担分は3兆9721億円(13.7%)である.
(2)対前年度増加率のうち,老人保健給付分は4.2%,患者負担分は17.7%と増加し,医療保険等給付分は3.4%の減少である.

制度区分別国民医療費
  平成9年度 平成8年度 対前年度
推計額
(億円)
構成割合
(%)
推計額
(億円)
構成割合
(%)
増加額
(億円)
増加率
(%)
国民医療費 290651 100 285210 100 5441 1.9
公費負担医療給付分 14008 4.8 13405 4.7 603 4.5
医療保険等給付分 140159 48.2 145156 50.9 △4,997 △3.4
医療保険 136826 47.1 141741 49.7 △4,915 △3.5
被用者保険 81976 28.2 86864 30.5 △4,888 △5.6
被保険者 47473 16.3 51685 18.1 △4,212 △8.1
被扶養者 34503 11.9 35178 12.3 △675 △1.9
国民健康保険 54849 18.9 54877 19.2 △28 △0.1
その他 3334 1.1 3415 1.2 △81 △2.4
老人保健給付分 96762 33.3 92898 32.6 3864 4.2
患者負担分 39721 13.7 33751 11.8 5970 17.7

3 財源別国民医療費

国民医療費29兆651億円のうち,「保険料」は15兆6973億円(54.0%)であり,「国庫」は7兆1051億円(24.4%),「地方」は2兆2594億円(7.8%)である.

財源別国民医療費
  平成9年度 平成8年度 対前年度
推計額
(億円)
構成割合
(%)
推計額
(億円)
構成割合
(%)
増加額
(億円)
増加率
(%)
国民医療費 290651 100 285210 100 5441 1.9
公費 93645 32.2 91198 32 2447 2.7
国庫 71051 24.4 69106 24.2 1945 2.8
地方 22594 7.8 22092 7.7 502 2.3
保険料 156973 54 159931 56.1 △2,958 △1.8
事業主 67780 23.3 69451 24.4 △1,671 △2.4
被保険者 89193 30.7 90479 31.7 △1,286 △1.4
その他 40034 13.8 34081 11.9 5953 17.5
患者負担(再掲) 39721 13.7 33751 11.8 5970 17.7

注:推計額は,制度区分別給付額を各制度において財源負担すべき者に振り当てたものである.

4 診療種類別国民医療費

(1)国民医療費のうち,一般診療医療費は23兆1695億円(79.7%)であり,そのうち入院医療費は10兆7744億円(37.1%),入院外医療費は12兆3951億円(42.6%)である.また,歯科診療医療費は2兆5346億円(8.7%),薬局調剤医療費は1兆6787億円(5.8%),入院時食事医療費は1兆743億円(3.7%),老人保健施設療養費は5487億円(1.9%),老人訪問看護医療費は517億円(0.2%),訪問看護医療費は76億円(0.0%)である.
(2)対前年度増加率をみると,入院医療費は2.6%,薬局調剤医療費は16.2%と増加し,入院外医療費は0.7%,歯科診療医療費0.3%,入院時食事医療費0.3%の減少である.

診療種類別国民医療費
  平成9年度 平成8年度 対前年度
推計額
(億円)
構成割合
(%)
推計額
(億円)
構成割合
(%)
増加額
(億円)
増加率
(%)
国民医療費 290651 100 285210 100 5441 1.9
一般診療医療費 231695 79.7 229790 80.6 1905 0.8
入院医療費 107744 37.1 104975 36.8 2769 2.6
病院 103214 35.5 100389 35.2 2825 2.8
一般診療所 4530 1.6 4586 1.6 △56 △1.2
入院外医療費 123951 42.6 124815 43.8 △864 △0.7
病院 55856 19.2 55991 19.6 △135 △0.2
一般診療所 68095 23.4 68824 24.1 △729 △1.1
歯科診療医療費 25346 8.7 25431 8.9 △85 △0.3
薬局調剤医療費 16787 5.8 14449 5.1 2338 16.2
入院時食事医療費 10743 3.7 10779 3.8 △36 △0.3
老人保健施設療養費 5487 1.9 4364 1.5 1123 25.7
老人訪問看護医療費 517 0.2 347 0.1 170 49
訪問看護医療費 76 0 51 0 25 49

5 年齢階級別一般診療医療費

(1)一般診療医療費のうち,0〜14歳は1兆4866億円(6.4%),15〜44歳 3兆6633億円(15.8%),45〜64歳 7兆264億円(30.3%),65歳以上10兆9932億円(47.4%)であり,さらに70歳以上では8兆5016億円(36.7%)である.
(2)年齢階級別に一人当たり医療費をみると,45〜64歳では19万7000円,65歳以上では55万6400円であり,さらに70歳以上では65万1700円である.

6 年齢階級別歯科診療医療費(略)

7 傷病分類別一般診療医療費

一般診療医療費を傷病分類別にみると,「循環器系の疾患」5兆4611億円(23.6%)が最も多く,次いで「新生物」2兆5081億円(10.8%),「消化器系の疾患」2兆304億円(8.8%),「呼吸器系の疾患」1兆9511億円(8.4%),「筋骨格系および結合組織の疾患」1兆8946億円(8.2%)である.

8 年齢2区分別各上位5傷病別一般診療医療費

傷病分類別一般診療医療費の構成割合を65歳未満―65歳以上の年齢2区分別にそれぞれの上位の5傷病をみると,65歳未満では「循環器系の疾患」,「呼吸器系の疾患」,「新生物」の3傷病で35.7%であるのに対し,65歳以上では「循環器系の疾患」が35.0%を占めている.


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