日医ニュース 第925号(平成12年3月20日)

「エホバの証人」輸血拒否訴訟で
日医見解を出す

「エホバの証人」の信者に対する輸血拒否訴訟について,二月二十九日,最高裁判決が出された.それによると,患者の医療上の自己決定権は,憲法で保障されている人格権の一内容として尊重されなければならないというものである.この事件は,平成四年九月,肝臓の腫瘍手術を受けた女性信者が,事前に輸血拒否をしていたにもかかわらず,医師の緊急判断で輸血が行われたと提訴していた.
 最高裁の判決を受け,坪井栄孝会長は,次のような見解を示した.

日医見解

 平成十二年二月二十九日に,最高裁判所第三小法廷より「エホバの証人」(日本では「ものみの塔」)という宗派の信者に対する輸血について判断が出されました.
 「エホバの証人」の信者に対する輸血については,日本医師会第 II 次生命倫理懇談会の「『説明と同意』についての報告」(平成二年一月九日)において,「『エホバの証人』(日本では『ものみの塔』)という宗派では,輸血を受けることは,自分の血を汚すものとして拒否するが,……その場合でも,医師は,治療上で輸血が必要ならば,患者を説得して輸血の同意を得るようにすべきである.しかし,患者があくまで輸血を拒否するのであれば,それが患者にとってたとい不利であっても,本人の意思によるものであるから,やむを得ないことであり,医師がそれについて法的な責任を負うことはないと考えられる」と報告されております.
 したがって,今回の判決は日本医師会の考え方に沿ったものと,受け止めております.

平成十二年三月一日
日本医師会
会長 坪井栄孝


日医ニュース目次へ