日医ニュース 第929号(平成12年5月20日)

勤務医のひろば

併診制の推進

 病院と診療所の機能分化の必要性が唱えられてから久しいが,思うように進行していないので,当院でその理由を調べてみた.かかりつけ医から紹介されて入院し,退院後は当院外来に通院している患者の主治医に理由を聞くと,「患者が手術後,私に続けて診てもらいたいというので」と答が返ってくることが多い.また,軽症の患者はかかりつけ医に紹介したらというと,「説得に時間がかかりすぎるので,忙しい外来中には紹介できない」との返事が多い.
 これらの議論をしながら思うのだが,併診制が普及したら,機能分化がもっとスムーズに行われるのではないだろうか.私の考える併診制は,「毎月の診療はかかりつけ医が行っていて,何カ月に一回は当院の外来で診療する.精密な検査や入院が必要な時は,当院に紹介していただく」方式である.これだと,患者は当院から「見放された」との不安がなくなり,いつでも当院の救急に来たり,入院できるとなると安心してかかりつけ医にかかれるようになるのではないかと思う.
 外来などに「併診の薦め」のパンフレットを置き,関心のある患者がいたら,病状を記載した紹介状と,併診の希望条件を書いた用紙を患者に渡し,かかりつけ医のところに持っていってもらう.かかりつけ医もこの病状なら責任が持てると思い,患者もこの先生なら診療してもらいたいと思ったら,患者をお願いするというのはいかがであろうか.
 併診制の亜系として,疾患別相談診察が行えないかと思っている.例えば,長年診療されておられる慢性肝炎の患者を,肝疾患の専門医の外来に紹介いただくと,腹部エコーや造影CTを同時に行い,患者は一〜二回来院するだけで肝腫瘍のチェックが済み,その後,かかりつけ医が引き続き診療を行う方式である.このほか,内視鏡やMRI,CTなどを予約制で行い,返信と主な画像をかかりつけ医に戻して説明していただくのも同時に行えればと思っている.ご意見をお寄せいただきたい.

(東京厚生年金病院長 木全心一)


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