日医ニュース 第930号(平成12年6月5日)
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全国紙の四月七日付コラムで「横暴な医師会」なるタイトルで記事が掲載された.記事内容に比し,タイトルがあまりにも中傷的であるために,早速,執筆した記者に,記事内容からして「医師会は横暴か」にすべきと抗議したところである.新聞社では,読者の目に止まるようにするためか,エスカレートしたタイトルが多く見られる.
日医を中傷する報道記事は,平成十年秋ごろから顕著となった.これは,いわゆる参照価格制度問題にはじまり,カルテ開示の法制化問題,准看問題,薬剤の一部負担の解消,看護婦の配置基準,今回の診療報酬を巡る諸問題等,日医が一丸となって対応し続け,成果を上げてきたことに起因していると思われる.しかしながら,これらの成果は,長年かけて構築した理念に基づき,シンクタンクからのシミュレーションを裏付けとした政策を掲げ,行政からの施策に対峙させ,時には政権政党と直接交渉できたことによろう.
従来,わが国では官主導の政策が,そのまま国の政治を動かしてきた側面がある.しかし,一連の官における不祥事等から,議会がやっと自らの使命に気づき始め,政治の流れが変わりつつある.これに関しては,すでに平成十一年二月五日発行の本紙の視点「官主主義を打破するために」で述べている.マスコミが日医の医療政策を自らの利益を守るためのみと批判し続けているが,はなはだ表層的視点である.日医は,世界に誇れるわが国の皆医療保険制度をいかに国民のために,より有効に活用していくかの方策,および医師のプロフェッショナルフリーダムの保持のために,常に政策立案の段階で対案を提示し続け,当然の権利を施行しているに過ぎない.その権利の必要性については,高校での社会科の教科書にすら記されている.
一方,特定の業界が自らの対案を提示することもなく,天下り役人の受け入れにより,業界の存続を図る方策は,国にとって,百害あって一利なしである.わが国の再生を図るためには,肥大化しきった官の権益を切り捨てる以外に道はない.そして,行政改革を断固として実現するためには,マスメディアが官からリークされたとしか思えない資料やコメントに頼らず,自ら調査し,本腰を入れ,世論を喚起すべきであろう.
また,わが国の医療制度の抜本改革について,日医がそれを阻んでいるという中傷報道が見られるが,曲解もはなはだしい.改革実現のために,日医は今後も,医療政策立案過程で自らの主張を提示し続けていく覚悟である.