日医ニュース 第931号(平成12年6月20日)

オーストラリア医師会総会に日医から出席
新千年紀に新たなリーダーシップを
初代女性医師会長が誕生


 二〇〇〇年のオーストラリア医師会全国大会・総会が,五月二十六日から二十八日まで,オーストラリアのキャンベラで開催され,日医から山田統正常任理事が,坪井栄孝会長の代理として出席した.
 オーストラリア医師会は任意加入の団体で会員約二万三千人,加入率は約六〇%となっている.会議には,オーストラリアの六つの州および特別地域の医師会から代表百三十五名が出席した他,海外からは,日本,ニュージーランド,イギリス,シンガポール各国医師会代表,世界医師会(WMA)のヒューマン事務総長が出席した.
 冒頭,ブランド会長は,「増大する急激な変化の時代に医師を導いていけるような新たなリーダシップを,新千年紀に創出していきたい」と抱負を述べた.つづいて,オーストラリア農業者連盟会長によるあいさつが行われた.当連盟は,オーストラリア医師会とともに政府に対して発言力を有する国内の二大勢力でもあり,医師会と一九八八年以来地域の医療サービスの充実に向け,協力関係を結んでいる.そこでは,地域における医師不足の解消と地域住民の健康の維持に通じる環境保全等が取り上げられた.また,資源大国であるオーストラリアでは,遺伝子組換技術は農作物には認めておらず,害虫に強く,農薬の使用量が半減し環境に益するという理由で,綿花の栽培には認められていることが述べられた.
 さらに,著名なファイナンシャル・アドバイザーによる講演では,医師を含めた退職後の生活設計を取り上げ,プランの早期立案,定期的な投資,積立年金の活用,節税の必要性が強調され,リスクを避けることが肝要であることが述べられた.次に,WMAのヒューマン事務総長が,WMAの最近の活動とこれからの方向性について報告し,WMAの活動に対するオーストラリア医師会の協力を呼びかけた.
 また,地域医師会からオーストラリアの先住民であるアボリジニのヘルスを取り扱う委員会の設置が提案され,アボリジニの間における慢性疾患への対処,幼少期からの健康管理の教育の実施,診療時における通訳サービス,和解の問題について取り上げるとともに,来年の政策討論のテーマとすることが決定された.その後,記念講演と活動に対する表彰が行われ,小児外科治療におけるシリコンの利用や,医師の緊急時における対応,例えば緊急医療現場に向かう途中での交通違反の看過や,不測の場面での治療に際しての医師の認証などを目的とする医師IDカード等々についての講演が行われた.
 最終日に行われた会長選挙では,オーストラリア医師会としてはじめての女性会長(ニューサウスウェルズ州会長でシドニー在住のフェルプス医師)が誕生した.総じて,会議は非常に良く企画運営されており,また,日医に対しては,英連邦以外の国からの参加ということで,心からの歓迎の意を表された.


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