日医ニュース 第933号(平成12年7月20日)

視点

看護職員は充足したか?

 平成三年から十年間の看護職員需給見通しが,今年度で終了する.
 厚生省は,平成十二年度で看護職員は百十五万九千人となり,需要見込数,就業見込数,就業実績数が一致し,需給バランスが取れると発表した.しかし,医療現場においては,看護職員が充足したという実感はない.特に,地方の市町村・山間部においては,看護婦不足はいまだに深刻である.
 現行の看護職員需給見通しは,各都道府県の医療計画による必要病床数を踏まえて,それぞれの就業場所(病院・診療所・施設等)における看護職員の需要数を推計して積み上げ,供給数は年当初就業者数,新卒就業者数,再就業者数を加算し,退職者数を減じて算出している.現行の見通しは,全体的な数字としては推計どおりの結果となったが,地域による需給のアンバランスがまったく表面に出てこないことが大きな問題である.
 また,個々の事項の推計では,需要病床数が少なく推移したこと,新卒就業者数が低く推移したこと,介護業務が増加したこと,再就業者数の把握が不十分なこと,退職者数が低く推移したこと等が反省すべき事項として挙げられる.
 今年度,これらの反省事項を踏まえて,平成十三年度から五年間の新たな看護職員需給見通しを策定することになった.需要数・供給数の推計・算出方法は基本的に現行と同様であるが,地域差を考慮する意味から,できる限り二次医療圏ごとの需給見通しを推計することとした.
 また,介護保険制度の実施に伴う病床構成,病床種別等の変化,就業場所の変化,医療法の改正等を考慮することが重要である.病院では,患者の在院日数の短縮や看護補助者数の推移,救急病床,慢性病床の扱い方等を考慮する必要がある.
 看護職員需給見通しは,保健婦,助産婦,看護婦,准看護婦の総計であり,そのうち准看護婦が四〇%程度を占めているという実績は,准看護婦の必要性を証明するものである.特に,看護職員の不足が続いている市町村・山間部では,准看護婦なしには需給見通しは立たない.
 このような状況下で,医師会が地域に根差した准看護婦の養成を続けることが,地域の看護職員の確保と地域住民の医療・保健・福祉の向上には絶対に必要なことであり,医師会の責務であろう.
 養成所運営の厳しい状況下,関係各位の奮闘を期待する.


日医ニュース目次へ