日医ニュース 第939号(平成12年10月20日)

会員の窓

 会員の皆さまの強い要望により,投稿欄「会員の窓」を設けることになりました.意見・提案などをご応募ください.


救急隊員との意見交換会
藤野俊夫(山口県・下関市医師会)

 救急医療体制は,一次救急,二次救急を担う医療機関数や市町村の救急医療に取り組む姿勢により,各医療圏ごとに固有の事情があり,問題点や課題も各医療圏で相当違っているものと考えられる.
 本県S市の救急医療現場の実状を認識しあう目的で,消防隊と二次救急医療機関である公的病院および市医師会との意見交換を行った(平成十年二月).
 『救急隊員からの意見』:(1)約半数は軽症例である(2)救急救命士の行う特定行為の許可を受けるまでの時間がかかる(3)輪番病院が満床時に困ることがある(4)搬送の許可を受けるまで時間がかかる(5)泥酔者を搬送したら苦情をいわれた等々.
 『公的病院の意見』:(1)輪番日でも多くの医師を拘束できない(2)救急医療に対応している勤務医は疲れている(3)救急専用ベッドを確保しておくことは難しい(4)救急救命士が除細動を行う際,心電図の電送は必要とする意見と電話連絡で直ちに許可してよいとの両論あり(5)軽症例は一次医療機関で対応できないものか等々.
 この意見交換会で,開業医のより積極的な救急医療への関与,メディカルコントロール体制の整備,救急医療担当勤務医の過重労働,勤務医と開業医の意識の齟齬等の問題点や課題が浮き彫りになった.しかし,本音の意見交換会は,医療機関と消防隊との相互理解を深めたとともに,その後の救急活動の円滑化のきっかけになったようである.

患者の大学病院志向で揺れる地域の救急医療
野島丈夫(鳥取県・中部医師会)

 患者の大病院志向が指摘されて久しいが,本県にも鳥取大学医学部附属病院があり,他県と同様,住民の大学病院志向が強い.西部地区の救急告示病院は,大学病院の他に十一施設あり,そのうち国公立病院六施設と私立病院四施設が輪番体制を担っているが,軽度から重度まで,多くの急患が大学病院に集中し,本来扱うべき最重度の疾患に対応できない事態が深刻である.大学病院にかかる急患の約九〇%が軽症といわれる.そのうえ,大学病院救急部のシステムにも問題があり,県医師会,西部医師会の調整の役割が,今,大変期待されている.
 鳥取大学医学部には現在,救急医学講座はない.国から救急医学講座および救急診療科設置の認可を受けることができれば,それが最善の方策であるが,当面は次のような対応が考えられる.
 (1)大学が独立行政法人になれば,大学病院が自らの運営方針として救命救急センターを創設する.
 (2)一方,大学病院を訪れる患者の調整を図るため,西部医師会の急患診療所を大学病院の構内に建設し,大学病院にかけつけた急患を,まず医師会の急患診療所で診察する.必要があれば,大学病院やその他の救急病院,地元の開業医へ紹介する.
 私たち医師が診療を通して住民と対話し,救急医療ネットワークの大切さを周知してもらうことこそ,かかりつけ医機能,病診連携,病病連携を強化する道につながるものと考える.

新夜間急病センター設立に寄せて
小池忠康(北海道・札幌市医師会)

 昭和四十七年一月,全国に先駆けて年中無休の夜間急病センターを,設立は札幌市,運営は札幌市医師会という公設民営の形で開設した.小児科,内科を中心に今までに百六十万人の患者を診療してきた.
 市民にとっては,大通十九丁目に行けば,きっと診てもらえるということは,夜の不安の一掃になっており,従前は周辺市町村からの急患も多々あった.今では,耳鼻科も標榜に加え,急患に対処している.他に眼科,産婦人科,皮膚科,泌尿器科,精神科に関しては,自宅待機医として急病センターに受診するか,もしくは問い合わせがあれば,専門科としての応需体制を組んでいる.
 しかし,時代の推移とともに建物の老朽化が進み,診療機器の増加などで施設が手狭になってきている.新夜間急病センターの新築移転計画を現在地に隣接する数倍の面積を持つ敷地に平成十五年度完成をめざしているところである.
 市の保健所,精神保健福祉・精神障害者地域生活支援センターをも合築し,相互に内容の充実を計るべく市民の医療ニーズにも応える構想で検討している.
 現在,都市での少子・高齢・高度情報化社会にあって,保健医療福祉が連携した総合的サービスの提供のための新しい情報・相談・支援の機能の付与も視野に入れている.

救急医療
中矢良一(愛媛県・松山市医師会)

 愛媛県下の救急医療体制は,現在,ほぼ順調に運営されているが,小児救急に関しては,今後対応が検討されている.
 三次までのシステムが実施されて以来,一次,二次の救急医療機関での負担が軽減されたことは喜ばしいが,三次機関のご苦労がしのばれる.
 一方で,救急医療システムに入っていない医療機関では,夜間や休日は,まったく医療と離れ,身心ともに解放されることが可能となった.しかし,夜間,休日は救急機関に診療を一方的にお願いしていることが,患者側からみて,医師の理屈どおり納得しているのだろうか.患者とすれば,異常が起これば,かかりつけ医を思い浮かべるのであろうが,診療時間をはずれていれば,やむなく,なじみのない当番の医療機関を電話や新聞などで探し,受診しなければならない.一番困った時に頼れないことも不幸にしてあり得る.
 医師も二十四時間,年中患者に拘束されることが義務ではないが,患者側の気持ちや感情を考慮しての対応をとっ ておくことが必要である.
 地域で長い期間かかりつけ医として定着し,住民の信頼をつなぎとめておくためには,一度考慮すべきことではないだろうか.

原 稿 募 集
  • テーマ 「がん検診」「救急医療」など
  • 字数 600字以内(本文のみ,字数厳守)
  • 匿名・仮名等はご遠慮ください.
  • 原稿の採否は広報委員会におまかせください.
  • 原稿は,タイトル・氏名・所属医師会・電話番号を明記のうえ,日医広報課「会員の窓」係宛郵送もしくはFAXでお寄せください.


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