日医ニュース 第941号(平成12年11月20日)

日医
「ヘルシンキ宣言」日本語訳完成


 イギリスのエジンバラ市で,十月三日から七日まで開催された第五十二回世界医師会総会において,「ヘルシンキ宣言」の修正案が,採択された.その後,日医では,ヘルシンキ宣言の翻訳作業に取り組み,このたび,ヘルシンキ宣言日本語版が完成した.これを受けて,ヘルシンキ宣言説明会が,十月三十日に開かれ,修正内容についての詳細な説明が行われた.
 日医からは,山田統正・星北斗両常任理事,坂上正道・畔柳達雄両参与が出席した.
 主に説明に当たった坂上参与は,修正に至る経緯ならびに修正内容について,次のように述べた.
 「今日の科学技術の進歩は目覚ましく,その制御が社会問題化し,ヘルシンキ宣言の修正も必要不可欠という機運が高まっていたなかで,一九九七年のハンブルク総会において,アメリカ医師会から修正案が提出された.しかし,この修正案はマニュアル化された,全面改定に近い内容のものとなっていたため,各国の同意を得られず,廃案となった.
 その後の修正議論において,日医は,宣言の骨格部分を崩さずに,部分的な修正に留めるべきであるとの主張を繰り返した.そして,ワーキンググループでの取りまとめ作業を経て,今回の総会での採択となった.この意味で,日医の主張が,今回の修正の方向に大きな影響を与えたといえる.
 今回の主な修正のポイントとしては,(1)宣言の適用範囲を広げ,ヒトの臓器,組織,血液,細胞,さらには本人の診療情報などを含む諸データを使用する医学研究をその対象とすることとした(2)被験者の安全を守るため,インフォームド・コンセントに関する規定を整備し,特に弱者の保護を強化した(3)進行中の実験をモニターする権利をもたせたり,研究者にすべての重篤な有害事象についての情報を報告する義務を課せるなど倫理審査委員会の権限を強化した―などが挙げられる.
 今後は,この修正版を多くの現場で活用してもらうために,医学会,大学関係者を通じて広く周知していきたい」
(なお,このヘルシンキ宣言は,日医ホームページで掲載中


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