日医ニュース 第941号(平成12年11月20日)
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日本医師会認定医療秘書は,医療事務の能力を有し,診療に多忙な医師を補佐し,秘書的な役割を果たす職種として,故武見太郎元日医会長の発案で生まれたもので,養成校の全国組織である全国医師会医療秘書学院連絡協議会(以下,全医秘協という)は三十六年の歴史を持つ.これを支援し,医療秘書の質を評価・担保する機関として,昭和五十七年度に日本医師会医療秘書認定試験委員会が発足し,本年三月末までに約七千人の合格者を世に送り出している.
医療秘書学院では,日医作成の教科書を使用し,秘書学概論,診療録管理,医療保険事務等の秘書専門教科と併せて,解剖生理,薬の知識,医療用語等の医学基礎教科をカリキュラムに組み込み,養成を行っている.変化する医療機関のニーズに応えるべく,平成九年度から診療報酬請求事務実習時間を三倍増とし,全医秘協による診療報酬請求事務実技試験を実施している.
日医では,日医認定試験合格に加えて,この実技試験合格,英語検定,速記,簿記,ワープロ,情報処理等のうち三種類以上の技能資格取得を要件として,日医認定医療秘書認定証を交付している.現在,その数は約四千三百人に達している.また,本年度の日医認定試験には,介護保険制度についての問題も加える等,時代の変化に対応した努力を重ねている.
本年十月七日に富山市で開催された第五十回全医秘協定例総会に参加したのは,八県医師会とその委託医療秘書学院(一県のみ医師会立)で,いささか寂しいが,養成県では非常に有益に活動している.
情報開示の推進が叫ばれ,本年四月の診療報酬改定では診療録管理体制加算が新設された.今後,診療録開示が進めば,診療情報管理の知識をもった者による総合的な医療情報管理が必要になってくることが予想される.
二十一世紀はIT(情報技術)の時代といわれ,政府もそのシステム構築を重要政策に位置付けている.医療においても,地域における検査データや画像等の情報の処理および共有化や,院内情報管理の手段としてのIT化が確実に進展する.このことから,医学的な基礎知識を学習し,コンピューターの操作を習得,情報管理について研修した日医認定医療秘書のような人材が必要になってくるであろう.この機会に日医認定医療秘書を再認識し,既存の医療秘書養成校への養成委託を含めて,日医認定医療秘書の量的,質的整備が望まれるところである.