日医ニュース 第941号(平成12年11月20日)

会員の窓

 会員の皆さまの強い要望により,投稿欄「会員の窓」を設けました.意見・提案などをご応募ください.


救急蘇生の「あいうえお」
天野教之(埼玉県・朝霞地区医師会)

 救急蘇生のABCは,基本的救急蘇生手技として広く医療従事者に普及しています.この米国心臓病学会で示されたABCの手順は覚えやすく,緊急時にも思い出しやすく,とても優れた方法です.
 私たち医師にとっては,横文字で覚えることはそれほど難儀なことではありません.しかし,一般市民にとってはどうでしょうか.英語を使いこなす人も増えてきています.しかし,まだまだ使えない人の方が多いのではないでしょうか.救急蘇生手技は,より多くの人に覚えてもらうことが大切です.救急蘇生手技を一人でも多くの人に覚えてもらい,救急時に実施できるようにするためには,日本語での救急蘇生法教育を行うことが必要ではないでしょうか.
 私は,子どもでも覚えられる「救急蘇生のあいうえお」を考案し,中学生を対象に救急蘇生訓練をしてきました.
 あ・顎あげて(気道確保)
 い・息ふきこんで(人工呼吸)
 う・動かして(安全な場所への移動)
 え・援助求めて(救急隊への通報)
 お・胸押そう(心臓マッサージ)
 声に出して読んでみていただけませんか.五七五七五のリズムで「て」で韻を踏んで作りました.とても覚えやすいと思いませんか?
 どうぞ,周りにいらっしゃる方に,「救急蘇生のあいうえお」を教えてあげてください.

航空機火災救難総合訓練に参加して
佐々木嘉彦(島根県・出雲医師会)

 島根県出雲空港管理事務所では,平成九年から毎年一回,防災の日前後に同空港内での航空機事故を想定して救難訓練を実施している.当時,名古屋空港,福岡空港等で相次いで起こった離着陸時の事故を教訓として行われることとなり,今年は第四回目である.
 訓練の規模は平成十一年度は,空港に隣接する自治体消防,警察,陸上自衛隊出雲駐屯地,医師会,日赤,空港救難隊等十九機関,参加人員二百六十九人,車輌三十台,ヘリ一機,滑走路上の旅客機一機が参加し,滑走路並びにその両側の着陸帯を使用する大規模なもの.
 医師会としては,県側から,協定に基づいた県医師会への出勤要請があり,空港直近の四郡市医師会が出動命令を受けた形で参加した.一方,日本赤十字社島根県支部は県からの要請により参加する.
 本年度もほぼ同等の規模となる予定で準備が進められている.
 元来,航空機事故は,時,場所を選ばず,とてつもなく困難な救難活動が予測される.滑走路上での訓練の有効性を危惧する意見もあるが,早朝五時台の出動,訓練実施は照明不足からの集散の困難さなど思いがけない体験もあり,空港備蓄の救援資材の点検など将来に向けての作業課題も種々得られている.
 実際に,県医師会から各郡市医師会へヘルメット,ゼッケン,車輌標識等の常時貸与,県警との道路封鎖時の通行権の確認など,むしろ大規模災害時の救急出動一般への成果が多いように思われる.

いわゆる北九州市方式について
栗山敦治(福岡県・北九州市医師会)

 現在,実施されている救急医療体制は,国から示されている消防法による救急告示病院と厚生省の補助金による救急医療体制がばらばらに機能していて,住民にも救急隊にも分かりづらい.このような救急医療体制の不備から現行の二制度の一現化を指示されたが,北九州市は二十六年前からすでに実施していて,市民にたいへん好評である.
 二カ所の夜間・休日急患センターで初療を行い,二次については,病院群輪番制・機能別救急体制,未熟児・新生児救急医療体制,眼科・耳鼻咽喉科救急医療体制で対応している.また,三次は二カ所の救命救急センターが機能している.
 平成十一年の救急患者の取り扱いをみると,二カ所の急患センターの受診者数は七万七千人,救急車搬送患者数が約三万五千人で,大部分を二次と考えると,年間約十一万人の市民が,「いわゆる北九州市方式」の救急体制の恩恵に浴している.また,未熟児・新生児医療体制では,約千人に対応している.これは,ともに北九州市の人口の約一一%である.
 これらの救急患者に対応するために,北九州市内の全医療資源を活用して,「いわゆる北九州市方式」を維持するべく,これからも努力していきたい.
 いずれにしても,会員,病院,大学はもちろんのこと,医療関係者の協力なしにできるものではありません.

小児救急の充実を
熱田 裕(三重県・津地区医師会)

 小児救急が社会問題になってから,相当の年数が経っている.やっと,国も平成十一年度から小児の二次救急に関して小児救急医療支援事業を実施しているが,あまり実行されていないようである.
 一言に小児救急といっても,一次救急,二次救急,三次救急とあり,二次救急のみを充実しても,一次および三次救急との機能分担と連携がシステム化されていないと,その有効的活用は望めない.そのなかでも,一次救急と二次救急との住み分けが大切であり,特に問題となるのが夜間の小児救急である.
 全国的にみると地域特殊性は存在するが,既存の救急医療体制には休日夜間急患センター,病院輪番制,医療情報システム等が整備されている.しかしながら,夜間に「小児科医の診療を受けにくい」「重症な入院患者を対象とする二次救急医療機関へ,軽症の小児救急患者が殺到している」といった実態がみられる.
 昨年,三重県が行った小児夜間救急医療に関する調査および三重県小児科 医会が行った小児救急の実態調査でも,「小児夜間救急は大人の一次救急と異なり,育児不安や保健相談的な要素を持った電話相談や受診が多いという特異性がある.また一方,小児科医が不足のため,小児夜間救急が小児科医の過重労働によって支えられている」ことが明らかになった.
 「子どもを安心して産み育てる環境作り」の一環として,二十一世紀に明るい希望が持てる,新しい公的支援による小児救急が急務である.


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