日医ニュース 第946号(平成13年2月5日)
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いわゆる第四次医療法改正案が,政省令などの一部変更の作業を経て,本年三月一日より施行されることになった.
今回の改正の要点は,入院医療を提供する体制の整備に関する事項と,医療における情報の提供の推進に関する事項の二点である.
このなかで,多くの議論を呼び,マスコミ等にも種々に取り上げられたのが,看護職員の人員配置基準の部分である.結局のところ,一般病床における看護職員の配置基準は,現行の四対一から,三対一に変更することに決定した.ただし,へき地,離島等の病院または二百床未満の小規模病院については,五年間の経過措置を定める等の激変緩和策が図られた.
この看護職員人員配置の変更に関する問題点の一つは,法律で定める最低基準を四対一から,三対一に変更すると,その条件を満たすためには看護婦を増やす必要があり,そのための医療費財源の確保が必要になるということである.その担保なしに,最低基準だけを変えてしまうのは,きわめて無責任なやり方であるという点である.
しかし,もっと重大な根本的な問題点がある.それは,医療法という法律そのものの存在意義に関するものである.医療法は,その第一条で,「この法律は,病院,診療所及び助産所の開設及び管理に関し必要な事項並びにこれらの施設の整備を推進するために必要な事項を定めること等により,医療を提供する体制の確保を図り,もって国民の健康の保持に寄与することを目的とする」と述べている.すなわち,医療法は,国民の健康の保持に寄与するという目的達成の大義名分に名を借りた「規制法」なのである.実際に,医療法の条文のほとんどが,「こうしなさい」「こうでなければならない」という「規制」を医療機関等に強いる内容になっている.このこと自体が,大きな問題点なのである.
看護職員の人員配置基準の問題でいえば,このような内容を法律によって定めている先進国はほとんどない.本来,看護職員の人員配置は,「法」の「規制」によって定めるべきものではなくて,例えば,患者さんの安全を確保するという視点で考えれば,看護職員を増やしたらどれだけ医療事故が減少するのかという成果,すなわちアウトカムを検討することによって決定されるべきものなのである.
今回の医療法改正の議論は,この根本問題に触れることなしに,「規制法」という枠のなかで,単に「規制」の基準を四対一にするのか,三対一にするのかということだけを議論したに過ぎない.そのことが,重大な根本的な問題点なのである.