日医ニュース 第951号(平成13年4月20日)

勤務医のひろば
国民から信頼される組織とは


 医療の優良企業で知られているJohnson and Johnson社がアメリカの企業評価番付の一位になったことが,二月二十一日付の日経新聞“春秋”欄に紹介された.
 JJ社の理念では,(一)顧客(二)社員(三)社会(四)株主の順に会社の業務の内容や,意思決定の優先順位が挙げられており,実際にこの方針が遵守されているか,監視する社内システムも存在している.この顧客のニーズや意見を最優先する会社の姿勢が,競争の激しいアメリカ社会でも評価されたのだろう.
 日医は,医師の団体としては,日本で最大の規模である.設立以来,医療に携わる専門の立場から,日本の予防医療や救急医療,保険医療制度などに積極的にかかわってきた.しかし,最近の活動状況を見たところでは,近年の医療を取り巻く環境の複雑化に必ずしも適切な対応ができていない.
 昨今では,医療事故と医師の責任が重要な社会的問題になっているが,この分野で先進的なアメリカでは刑事罰を科すのではなく,再発防止に向けた医師の再教育に力点を置いているという.この問題では,むしろ過失としての責任に重きをおくべきで,犯罪として扱うことは防衛的医療を促し,結果として患者の不利益につながることが,アメリカの医療でも証明されている.再発防止により,医療事故を少なくすることが最も優先されるべきである.
 また,昨年十二月三十一日付の朝日新聞の社説で,医療費不正請求問題の解決法に医療費の明細書の開示を提案している.
 日医も,会員に不正請求を行うものがいれば,断固糾弾し,医師会の脱会や罰金などの具体的な防止手段を構ずべきである.医療の情報開示をし,自浄作用を持つ組織でなければ,単なる権益の保守団体であり,将来,社会からつぶされてしまう.
 国民は,安心して受けられる医療を重要に思っている.国民から信頼評価される機関としての日医の医療への取り組みを望みたい.

(東京都立大久保病院内科医長 柴田仁太郎)


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