日医ニュース 第953号(平成13年5月20日)
日医提案の 「高度医療技術と医の倫理に関するWMA宣言案」 理事会で承認 |
坪井栄孝会長(WMA会長),糸氏英吉(WMA理事)・石川高明両副会長,星北斗常任理事,林幹三議長(WMA理事)は,五月三日から六日までフランスのディボンヌ・レ・バンで開催された第百五十九回世界医師会中間理事会に出席した.この会議では,昨年十一月に日医が主催した「高度医療技術と医の倫理に関する東京会議」の成果としてまとめた決議を,「高度医療技術と医の倫理に関するWMA宣言案」(下掲)として提案した.この文書は,新世紀にふさわしい倫理原則を提示した内容となっており,医の倫理委員会,および理事会で承認され,本年十月に開催される第五十三回WMAインド総会に採択のため付託されることが決定された.なお,この宣言案は,昭和二十六年に日医がWMAに加盟して以来初の提案文書となる. |
理事会 |
今回の理事会は,昨年十二月に実施された地域理事選挙に伴い,二〇〇一年から二〇〇三年にかけての新しい理事により構成される初めての会合であった.まず,役員の選挙が行われ,新しい議長にスモーク・アメリカ医師会長,副議長にムン・韓国医師会名誉会長,財務担当役員にフィルマー・ドイツ医師会前会長がそれぞれ選出された.
常設委員会の委員長には,医の倫理委員会は,スバーボ・ノルウェー医師会事務局長,社会医学委員会は,モ・フランス医師会長,財務企画委員会は,ブレイシャー・イスラエル医師会長が同じく選出された.日医からは,糸氏副会長が医の倫理委員会と社会医学委員会の委員に,林議長が医の倫理委員会,財務企画委員会の委員にそれぞれ任命された.
また,坪井会長がWMA会長報告として,前述の東京会議,および本年一月末に出席した世界経済フォーラム(ダボス会議)の概要を述べ,それぞれの会合のWMAとしての意義を説いた.
医の倫理関 |
一,修正ヘルシンキ宣言
第五十二回WMAエジンバラ総会で採択された修正ヘルシンキ宣言は,その後世界の各方面からの反響を受け,特にプラセボの扱いに関するガイドラインの項目に対する意見が寄せられている.WMAでは作業部会を設置し,主にこの項目について当修正宣言を検討していくことになった.
二,総会へ採択のため付託される文書
(1)女子胎児と女子幼児の殺害に関する声明案
(2)高度医療技術と医の倫理に関する宣言案
(3)精神医学の政治的乱用に関する決議案
(4)安楽死に関する決議案
三,作業部会を設置し,再起草される文書
(1)化学・生物兵器に関する宣言修正案(日医が作業部会に参加)
四,各国医師会にコメントを求めるため回覧される文書
(1)囚人およびその他拘留者のヘルスケアに関する声明案
(2)ハンガーストライキ実行者に対するマルタ宣言修正案
社会医学関係 |
一,修正を経て,採択のため総会へ付託される文書
(1)自己投薬に関する声明案
二,作業部会を設置して再起草した後,各国医師会へコメントを求めるため回付される文書
(1)医療データベースに関する倫理的考察に関する声明案
(2)医師の臨床家としての独立性と専門家としての完全性に関する声明案(日医が作業部会に参加)
(3)国の医療制度の持続可能性に関する声明案(日医が作業部会に参加)
三,作業部会を設置し,検討される文書
(1)医師の移動に関する決議案(日医が作業部会に参加)
四,各国医師会にコメントを求めるため回覧される文書
(1)病名に関する決議案
(2)医学雑誌の編集者の責任に関する声明案
五,緊急を要する案件のため,総会へ付託されず採択された文書
(1)たばこの規制に関するWHO枠組み条約に関する決議
財務企画関係 |
一,加盟申請
総会へ承認のため付託される医師会
(1)アゼルバイジャン医師会
(2)グルジア医師会
二,第百六十二回WMA中間理事会の開催場所
二〇〇一年五月WHO総会の一週間前,フランス,ディボンヌ・レ・バン
三,第五十八回WMA総会開催地
二〇〇六年の標記総会が南アフリカ共和国で開催されることが決定された.
戦略会議関係 |
この会議では,WMAが組織としての発展の可能性を図るため,企画戦略および活動方針について議論が交わされた.各理事の意見は,加盟医師会へコメントを求めるため回付される.
第159回WMA理事会 日本医師会提出 医療技術の開発と発展においては人類の繁栄と技術の利用の限界とのバランスを取ることが必要であり,それは医師の良識に委ねられている.それゆえ, 1.医療技術の活用は人類と患者の健康を守る目的に限定され,その開発と発展において医師は患者の安全を十分に配慮する必要がある. |