日医ニュース 第958号(平成13年8月5日)

日医
毎日新聞の不当記事を質す

 毎日新聞は,「外来薬剤費 水増し請求横行か」というタイトルで,「二百五円ルール」についての取材記事を掲載した.その内容があまりにも恣意的かつ不適切であったため,七月十七日,青柳俊常任理事が記者会見を行い,「毎日新聞記事の信憑性について」と題して,日医の見解を明らかにした.それと同時に,毎日新聞社に対しても,同記事の掲載趣旨を問い質す質問状を送付した.

毎日新聞記事の信憑性について

 毎日新聞は七月十六日付の朝刊で,「外来薬剤費 水増し請求横行か」と報じた.しかし,内容を読むと,この報道は以下の点で大きな誤りを犯している.
 堂々とした批判は一向に構わないが,報道に当たっては,報道機関の公共性,中立性の観点から,エビデンスの確認等,常識的なチェックは最低限のマナーとして行ってほしい.
 一,記事では,「二百五円ルール」で請求された割合が上昇した理由を「薬価差益が少なくなってきたため『二百五円ルール』を悪用した請求が増えたのが一因」と断定している.
 しかし,この論理では,引き続き薬価差は縮小しているにもかかわらず,九八年から九九年にかけて,わずかながら二百五円ルール該当比率が下がっていることの説明がつかない.論理的でない断定は間違いのもとである.
 逆に九七年から九八年の同比率は上がっているが,この時期を思い出してほしい.九七年九月に施行された健保法等の改正によって薬剤の二重負担が導入され,患者に重い負担が課せられた.医療機関側は,患者にこの二重負担がかからないよう,二百五円以下の薬剤の選択を始めた.二百五円以下なら一種類とカウントされ,二重負担がかからないからである.その結果,二百五円ルール該当比率が上昇したと考えるのが自然である.
 二,記事では,匿名の医師との一問一答を論拠として,「『二百五円』は打出の小づち 年千五百万円に」と報じた.よく読むとこの医師は,そもそも過去にも不正請求を行っている人である.この医師の不正を暴くのならともかく,あろうことか,そういう医師との一問一答をもとにして,それがすべての医療機関に該当するかのような記事にしている.毎日新聞の不見識を疑わざるを得ない.
 そもそも二百人の患者から,二百五円ルールを悪用して年間千五百万円の粗利益をあげることは,いうほど容易なことではない.
 ジェネリック品を先発品で代替請求する手口が述べられているが,一患者当たり百円の不正利得があったとしても,すべての患者に二剤の処方を毎日行わなければならないことになる.
百円×二百人×二剤×三百六十五日=千四百六十万円 
 このようなことが恒常的に行われているのであれば,これは明らかに犯罪行為であり,毎日新聞として告発すべき対象である.
 しかし,もし,「例えばこんなことも考えられる」という意味で例示されたものを,さも実際に行われたかのごとく報道したのだとすれば,毎日新聞の責任はきわめて大きいといわざるを得ない.
 記事には,さらに日本医師会の医師が審査に手心を加えているかのような記述があるが,これなどはまったくの憶測,でっち上げであり,このような毎日新聞の報道姿勢に対して,断固抗議するものである.


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