日医ニュース 第967号(平成13年12月20日)

国民医療を守る全国総決起大会
医療改革実現に向け一致団結

 日医は,日本歯科医師会および日本看護協会とともに,12月1日,東京・千代田区の日比谷公会堂において,「国民医療を守る全国総決起大会」を開催した.当日は,主催3団体のみならず,大会趣旨に賛同した23の関係団体も参加,会場の収容人員をはるかに超える3,000人が出席して大盛況であった.

 今回の総決起大会は,現在,「聖域なき構造改革」の名のもとですすめられている医療制度改革によって,国民医療が危機的状況下におかれていることに鑑み,今こそ,全国の関係者が一致団結して,国民皆保険制度を堅持しなければならないという趣旨で企画されたものである.九月二十五日に厚生労働省の「医療制度改革試案」が公表されて以来,日医は,「国民医療を守る全国キャンペーン」を実施し,(1)署名運動(2)意見広告(3)決起大会―の三本立てで行動を展開してきた(本紙十二月五日号一面参照)が,その集大成としての位置づけで,今回の大会が開かれた.
 日医が全国規模で決起大会を開くのは,平成八年十一月の「国民医療を守る医師総決起大会」以来,五年ぶりであるものの,今回のように,日本歯科医師会(日歯),日本看護協会(日看協)との共催,さらに,二十三にものぼる参加団体を得て行動を起こすのははじめてである.
 会場には,白地に「医療危機突破」という赤字の鉢巻きをした出席者で溢れ,立見席のほか,ホールでもテレビを使って会場内の模様を放映した.
 会場舞台正面には,「国民医療を守る全国総決起大会」と大書きした看板がつられ,その両脇には,「健康で心豊かな社会を」「長生きを喜び合える社会を」「国民のための医療改革を」「国民皆保険を守ろう」という四つの大会スローガンが揚げられた.
 舞台上には,主催団体関係者や来賓のほか,いつもは多数出席する国会議員に代わって,今回は二十三参加団体の代表者が勢揃いした.
 午後二時,西島英利・羽生田俊両常任理事の司会で幕が開き,まず,主催者である坪井栄孝会長,臼田貞夫日歯会長,南裕子日看協会長の紹介が行われ,ついで,山崎摩耶日看協常任理事が登場.「『聖域なき構造改革』の名のもとに医療制度改革が進められ,国民に多くの負担を求め,国民皆保険の基盤をもゆるがしかねない医療危機の状況にある.本日,日本医師会,日本歯科医師会,日本看護協会は,国民の皆様,関係団体の皆様とともに,国民医療を守る決意とともにここに立ち上がった.『国民医療を守る全国総決起大会』の宣言をここにする」と力強く開会の宣言をした.

坪井会長 国民の幸せのための改革を

 つづいて,大会実行委員長として,坪井会長があいさつに立ち,次のように述べた.
 私は,当初から,「日本の医療は変わらなければいけない,日本の社会保障はもっと充実しなければいけない,したがって,この小泉総理の改革論を支持する」ということを明言していた.しかし,今,断行されようとしている「聖域なき構造改革」は,ともすると改革ではなく改悪になりそうなところがある.われわれは専門家としてしっかりと軌道を修正し,国民の幸せのための改革としなければいけないと思っている.
 われわれの立場からすると,伸び率管理制度というのは,官僚がわれわれを抑えようとする道具に過ぎず,どこにその財政効果があるのかさえ定かでないような制度である.サラリーマンの三割負担に関しては,依然として課題が残っており,本当の改革論議はこれからである.国民の医療を守る,国民の医療をよくするという,皆さんの熱気が十分に永田町,霞が関に届くように,声を大きくして本日の大会を盛り上げたい.
 今の経済財政諮問会議や総合規制改革会議の考えていることを容認すると,財政主導型のアメリカの管理医療や,欧州諸国の中央集権的な管理医療が日本のなかに入ってくる.その結果,アメリカの医師のように民間保険会社の顔色を見ないと仕事ができなくなったり,看護婦さんは民間保険会社に命じられたままに患者さんを査定しなければならなくなる.そんなことになっては,せっかくの公的な皆保険制度を持っている日本の医療の崩壊につながる.どんなことをしても,われわれはこれを止めなければいけないと強く思っている.
 先般,今回の医療制度改革に対する不満をつづった五百万有余人の国民の反対署名をいただき,私どもを通じて政府に提出してある.それに対して,政府はどう考えるのか.これからじっくりと見守っていかなければいけないと考えている.
 本日お集まりいただいた皆様方の高いご見識,強い志に敬意を表し,心から御礼を申し上げたい.

「国民の苦しみが見えぬのか!」

 次に,主催団体決意表明に移り,糸氏英吉副会長,臼田日歯会長,南日看協会長がおのおのの立場から決意表明を行った.
 来賓として,全国町村会から山本文男会長が出席し,「市町村は,国民健康保険制度を守ることができない状況下にあるため,私たちは,医療保険制度を一本にまとめるべきであると主張している.そして,一本化をやることによって,健康保険全体の危機状態を切り抜けることが必要であると考えた.そこで,医療改革に関しての意見書を医師会と町村会で共同でつくりあげ,現在,これを関係方面,関係省庁へ配布し,理解を求めているところである」とあいさつをした.
 同じく来賓として出席した全国地域婦人団体連絡協議会の秋田幸子会長は,まず,超高齢社会の到来により増大する医療費負担を軽減するために,国民に重い負担を強い,高齢者にしわ寄せをしようとする改革が打ち出されていることに,強い憤りを表わし,「保険料の負担に耐えきれなくなった人々や,必要な医療や介護さえ受けられないでいる多くの人たちの姿が見えないのか.医療・福祉・介護分野において,経済性最優先の構造改革では,不安を覚えずにはいられない」と憤慨.最後に,「どんなに障害が大きくても,私たち五百万の会員は団結して,医療保険制度を守り推進するために協力を惜しまない.より多くの国民の理解と協力が得られるような運動を展開していただきたい」と激励のことばを寄せた.
 ここで,司会者から,次のような申相珍韓国医師会長のメッセージが披露された.
 「二〇〇一年十二月一日に日本医師会を含む主な医療関連団体が全国総決起大会を開催するというニュースを聞きました.『聖域なき構造改革』の名のもとに,信念ある医師の業務を妨げ,患者の医療に対する権利を制限するような政府の一方的な政策に対抗し,国民の健康を守ろうとする貴職およびすべての日本医師会員を私は七万人の韓国医師会員を代表して心から尊敬し,また,全面的に支援いたします.現状が速やかかつ平和的に解決されることをお祈りいたします.ご支援できることがありましたら,どうかお知らせください」
 会の終盤,岡邦恭日歯副会長によって「決議(案)」が声高らかと読み上げられ(右掲参照),満場一致で採択された.
 つづいて,西島常任理事の音頭による「頑張ろうコール」が三唱され,岡谷恵子日看協専務理事の閉会のことばで,一時間半にわたる大会は幕を下ろした.
 なお,当日採択された「決議」は,十二月五日,石川高明副会長,臼田日歯会長,山崎日看協常任理事らの手で,坂口厚生労働大臣(桝屋副大臣対応),塩川財務大臣(武藤事務次官対応)宛,および与党三党(自民党―山幹事長・麻生政調会長,保守党―野田党首,公明党―北側政調会長)に手渡された.

決  議

 本大会は主催団体の決意表明を基に,参加者全員の総意として,次のとおり決議する.

1.国民のための医療改革実現
1.国民皆保険制度の堅持
1.患者負担増反対
1.老人医療費伸び率管理反対
1.医療の質の維持向上

平成13年12月1日
国民医療を守る全国総決起大会


参 加 団 体

日本病院会,全日本病院協会,日本医療法人協会,日本精神科病院協会,日本産婦人科医会,全国公私病院連盟,日本病院薬剤師会,日本柔道整復師会,日本放射線技師会,日本臨床衛生検査技師会,日本理学療法士協会,日本作業療法士協会,全国病院理学療法協会,日本栄養士会,日本鍼灸師会,全日本鍼灸マッサージ師会,日本医療社会事業協会,日本介護福祉士会,日本社会福祉士会,日本訪問看護振興財団,全国訪問看護事業協会,日本医療教育財団,日本医療事務振興協会



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